教育講演3多様性に寛容な社会と職場を目指して座長:林 千冬(神戸市看護大学 基盤看護学領域 看護管理学分野)講師:宮子 あずさ(看護師 & 著述業)

 

● 自分らしさと看護師らしさ

看護師は時に理不尽であっても“患者さんらしさ”を尊重する一方、自分は本来の“自分らしさ”を抑制し、“看護師らしさ”という枠に当てはめる傾向にある、と宮子氏は自身を振り返りながら指摘する。それが原因でしばしば不寛容で強固的な思考に陥りがちな看護師たちには、共通する次のような背景があるという。

 

  1. 予後が不確定な中で、緊急性のある選択が求められる
  2. 生命にかかわる極限の状況で、理性的な判断が求められる
  3. 高い倫理性が求められ、倫理的葛藤が生じやすい
  4. 完全治癒など、誰もが望む最高の状態は、容易に選択できない
  5. 経済原理を働かせてはならず、優先度がつけにくい
  6. しばしば、強く感情が揺さぶられる

(宮子あずさ著『宮子式シンプル思考主任看護師の役割・判断・行動―1,600人の悩み解決の指針』日総研出版より)

 

●「不寛容」が生み出される理由

さらに看護職は、個人で抱えきれない難しい問題と向き合い判断が求められる立場に置かれており、それらを「組織の判断」という形で防衛せざるを得ないという現状がある。その過程でマニュアルや階級社会、規則、〜らしさ、制服といった画一化・均一化により個の抑圧が図られ、不寛容な組織が生み出されるのだと述べた。

 

また、こうした事態には患者・利用者らの不寛容さも影響を与えているとし、病状の悪化や死を受け入れられない患者の思考の歪み、価値観の固執から生じる理不尽な態度・行動といったものを看護師は常に許容せざるを得ない。その状況が「患者に寄り添うことは善」「陰性感情を抱くことは悪」といった個の抑圧につながっていると説明した。

 

 

宮子氏は、多様性を認め寛容であるために必要な姿勢として、自分が普通だと考えないことや、同意と理解を混同しないこと(理解しても同意しなければならないわけではない)、また相手の気持ちを決めつけないこと、そして「好き嫌い」を「正義」の問題にすり替えないことを提案。「その人らしく働く看護師が、患者さんのその人らしさを大事にでき、そこに臨床の楽しさが生まれる」と語った。

 

 

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