職場外学習のネガティブイメージ
吉田:先生は『経営学習論』(東京大学出版会)の中で「職場外で学習する人は会社へのコミットが低くて業績を上げられないというのが一般的イメージだ」と書かれていますが、看護職の場合は自施設から外へ出て自主的に勉強会をしている人というのは、先生がおっしゃる「業績も高くてさらに頑張っている人」というプラスのイメージしかないと思うんです。
中原:企業と言ってもいろいろありますが、一般には、そういう越境学習者は「ネガティブ」なラヴェルを打たれることの方が多いかもしれませんね。
吉田:その感覚がどうもわからないんです。一体どういう人なのか......。
中原:日本の会社は一般的には、基本的に長時間労働で、かつ職場には同調圧力が存在しますよね。一時期からみて、改善の傾向があるとはいえ、組織からすれば、そういう方々は「外に行ってそんなことしている暇があったら会社でもっと働け」という感じに思われるのではないでしょうか。だからネガティブイメージが強い。でも少し最近、人事領域やR&D部門の捉え方が変わってきていて「どう考えても社内だけじゃ新しいものが生まれないな」と言われるようになってきています。そういうイノベーションをめざす人々が、組織というコンテキストを離れ、バウンダリーを越境し、さまざまに知識を交換している。そういうこともずいぶん起こってくるようになりました。
一方、「正社員消滅時代」なんて言われるような時代においては、組織が社員のキャリアや能力を保証することができなくなってきていますね。そうすると、キャリア不安を抱える人が出てきて何をどうしたらいいかがわからなくなった結果、外の世界に活路を求める。
つまり、こういうことですね。一方では、イノベーションやプロフェッショナリティを求めるために外にでるといったハイエンドな人たちがいて、やるべきことを明確に見据えて外に出て行く。一方で、キャリア不安や雇用不安を抱えた人々が、外にではじめている。このように同じ越境学習者といっても二極化していると思います。
日本看護協会出版会
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