教育講演1ダイバーシティをいかす組織とリーダーシップ◯座長:勝原裕美子(オフィスKATSUHARA)◯講師:谷口真美(早稲田大学大学院商学研究科)
メインテーマ中に「多様性」というキーワードを掲げた本学会における教育講演。長年「ダイバーシティ(多様性)」を研究している谷口氏が、「ダイバーシティの考え方の変遷」「ダイバーシティとパフォーマンスとの関係」「ダイバーシティマネジメントの実践(リーダーの役割)」について、理論や事例を交えて解説した。その中で、特に管理者にとって興味深いと思われる指摘を2つ紹介する。
1. 管理者に重要な「距離」の認識
組織のダイバーシティをとらえる観点には「格差(影響力をもつ役職をマジョリティが占める時に生じる)」「種類(各メンバーがもつ固有の違い)」「距離(職場内の価値観の隔たり)」の3つがある。管理者は組織を各観点から理解する必要があるが、特に自己と部下の価値観の「距離」について把握し、集団のアイデンティティをつくることが重要となる。
2. コンフリクトへの対処がもたらすよりよい協働
多様なメンバーから成る集団ではコンフリクトが起こりやすいが、それは必ずしも集団にとってマイナスではない。管理者がコンフリクトに対処することは、よりよい協働の創出につながり得る。
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旬のテーマでもあり、聴衆はたいへん熱心に聞き入っていた。フロアからの質問「リーダーは組織内の多様性に着目するものの、そこで留まってしまうのをどうしたらよいか」に対して、谷口氏は「外部環境との関係性で、職場の外に視点を向ける。世の中に適合するために今ある人材をどうするかという視点をもつこと」とアドバイスを行った。