Check Sheet
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クリティーク・チェックシートは、研究手法ごとに異なるクリティークのポイントを整理したものです。本書ではそれぞれのシートの活用方法と実用例を詳しく紹介しています。このサイトで提供しているチェックシートは本書(第Ⅲ章)と同じ内容ですが、Wordのファイル形式で作成していますので「チェックの根拠」などを直接入力が可能です。また必要に応じて自由にカスタマイズしてご利用いただけます。
ケーススタディ(事例研究)とは、一人の患者についての徹底的な調査研究とされ、得られたデータをもとにして起こった現象の原因を探求したり、経時的な傾向をつかんだりするための記述研究です。研究デザインは前向き(計画してデータ収集する)や後ろ向き(すでに関わりが終了した患者について振り返る)があります。特定の条件下における複数の患者を研究対象としたケースシリーズも同様です。ケーススタディは近年、新しい研究方法として確立されつつあります。特に質的研究で用いられ、特定のリサーチクエスチョンに沿って複数の対象者を集め、詳細なケースの記述をした上で、そのリサーチ・クエスチョンについての答えを明確化するものです。本書では日本での報告に多い、1事例を扱ったケーススタディに焦点を当てて、クリティークのポイントを紹介しています。
質問紙調査は研究デザインではありませんが、研究手法の一つとしてよく用いられるデータ収集方法です。郵送調査・対面式インタビュー・電話インタビュー・ネット調査などがあり、どの方法を使えばよいかはその研究の目的に照らし合わせて選ぶ必要があります。郵送調査は研究対象者を大規模にできるためよく使われますが、この研究手法を用いた論文をクリティークする際に注意する点は多くあります。このチェックシートに示した項目は、他の研究方法と共通するものが多く含まれています。本書では郵送調査で特に重要となる質問紙(アンケートの内容や尺度)の信頼性と妥当性、サンプリング方法(対象者の選定)、ノンリスポンス・バイアス(非回答者の偏り)について解説しています。
観察研究のエビデンスレベルは、メタ分析や介入研究に比べると低く、専門家の意見より高いものです。観察研究には分析研究と記述研究の2種類があり、分析研究は疾患と曝露(危険因子に晒されること)との因果関係を調査する研究でコホート研究、症例対照研究を含みます。看護研究では、因果関係よりも相関関係を調査する研究が多くあります。記述研究は単なる記述的な報告で因果関係の立証を目的としないもので、事例研究、ケースシリーズを含みます。横断研究は分析研究、記述研究のいずれにも所属します。エビデンスレベルは記述研究よりも分析研究が高く、分析研究の中ではコホート研究>症例対照研究>横断研究という順に高くなります。本書では、これら分析研究のクリティークについて解説しています。
介入研究とは、人間集団の一部を対象にして、ある治療やケアを人為的に与えたり取り除いたりすることによって観察を行う研究のことです。大きく分けて無作為化比較試験(randomized controlled trial:RCT)、比較対照研究、介入前後の比較研究に分類されます。介入研究をクリティークするポイントは「バイアスをどの程度制御できているか」と「書くべきことが書かれているか」であり、このバイアスを最小限にするよう設定した方法がRCTです。そのため、介入研究の中ではRCTが最も推奨されています。本書では、混入しやすいバイアスを中心に3つの介入研究方法について解説しています。
日本の看護学領域における質的研究は年々増加傾向にあります。それにともない研究者ごとに異なる理論的前提(象徴的相互作用論、エスノメソドロジー、構造主義的モデル)や対象の理解の仕方、また方法論的な焦点に基づくさまざまなアプローチがみられ、評価基準を統一することが難しいと言えます。また、無作為化比較試験と違ってエビデンスレベルの低い質的研究では、客観性をいかに保つかが重要です。本書では特に重要となるサンプリングの妥当性とデータ収集、分析について述べています。
レビューとは、特定のテーマに合致する研究論文を集め、研究の目的・方法・結果のアウトカムを比較対照し、テーマの結論として何が言えるのかをまとめたものです。レビューさえ読んでおけば先行研究のすべてに目を通さなくても最新の知識を得ることができるため、大学院生をはじめ臨床の研究者らにもまずレビューを読むことを勧めます。そこでテーマの概要をつかみ、文献で用いられていた原著論文を取り寄せてクリティークをしていきます。さまざまな研究法で書かれた論文を読む時に、本書で紹介しているそれぞれのクリティーク手法が役に立つでしょう。
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クリティーク・チェックシート