連載:パーソナル・ライティング

考える〈私〉をともに創る

谷 美奈(取材と文:坂井 志織)

 

第2回 個を深め、他者へ拓く

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表現する〜発表会&朗読会&ZINE

 

パーソナル・ライティングの大きな特徴の一つが、書くという作業が書き手だけに閉じられていないということです。書くという行為自体は個人作業ですが、周りには書くことに取り組む同じ仲間がいます。さらに、教員である谷さんとさまざまなポイントで対話が行われています。まさにマラソンのように、それぞれが単独で行いながらもまったくの孤独な作業とは違った仕組みです。また、先述した推敲では自分の中に想像上の他者である「他者の目」がつくられ、他者の目で自らの作品が読み込まれていきます。

 

このように制作過程には、教員-学生という縦関係の他者、学生同士という横関係の他者、(推敲による)自分の中の他者の目というメタ関係といった、多層的な他者が関係しています。このプロセスを経ることで、自分を起点として他者にかかわっていく力の素地がつくられるのでしょう。

 

それを開花させ結実させているのが、朗読会や同人誌「ZINE」などの他者に向けた発表の場です。ここでは朗読会について紹介したいと思います。

 

朗読会では、選ばれた“佳作”数篇の書き手が、自作の朗読者として登壇します。朗読が終わると、学生はまず執筆の感想を述べ、次いでフロアーの学生からの質問や感想にこたえ、ディスカッションが始まります。まさに“リアル他者”との交流が、公開で、自他ともに見える形でなされています。

 

これはどのような効果を生んでいるのでしょう。登壇した学生にとっては、大きな手応えが得られるのはもちろん、フロアの学生も“自分にとっての佳作”を選び投票するシステムになっており積極的な聴衆者となります。また“次は自分が佳作をとる!”というモチベーションにつながったり、他者の作品から知的刺激を多く受けています。

 

今回は、パーソナル・ライティングの具体的な実践をご紹介しました。とりわけ重要なポイントは、

 

  • 考える主体〈私〉をつくっていく仕組みが、各段階にそれぞれさり気なく仕掛けられているところ。
  • 書くという個人作業を、個人・複数・全体・教員でという多層的になされていること。

 

この2点です。第3部では、これらに着目しながらパーソナル・ライティングの意義に迫ってみたいと思います。

 

(第3回へつづく)

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イントロダクション

第1回 学びの主体形成

第2回 個を深め、他者へ拓く

第3回 考える〈私〉をともに創る

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