病院主体の在宅看護ケアのパフォーマンスに影響する

内的・外的環境因子

J.-W. Noh1  PhD, USCPA, Y.-D. Kwon2 MD, PhD, S.-J. Yoon3 MD, PhD & J.-I. Hwang4 PhD, RN

*1 乙支大学校保健産業大学 健康管理部教員(韓国、城南市)

*2 カトリック大学校医科大学 医療人文学/社会科学部 教授(韓国、ソウル市)

*3 高麗大学校医科大学 衛生学部 教授(韓国、ソウル市)

*4 慶熙大学校看護科学大学 看護/健康管理学部 准教授(韓国、ソウル市)

translated by  Shiori Nishikata, et al.

TAYLOR G., PAPADOPOULOS I., DUDAU V.,MAERTEN M., PELTEGOVA A. & ZIEGLER M. (2011) Intercultural education of nurses and health professionals in Europe (IENE). International Nursing Review 58(2), 188–195: © International Council of Nurses

 

目的:病院を主体とした在宅看護ケア(以下、HNC)のパフォーマンスを評価し、それに影響する内的・外的環境因子を特定すること。

背景:HNCサービスの必要性や効率のよさ、効果の重要性を強調した先行研究が行われた。HNCサービスの肯定的な結果について多くの研究があるが、肯定的な結果に関する重要な因子についての研究はなされていない。

方法:2006年11月現在、韓国でHNCサービスを実施している89の病院すべてで実施した。HNCサービスのパフォーマンスへ影響する因子は、内的または外的環境因子として分類した。今回の分析は、対応因子がHNCサービスのパフォーマンスへどのように影響するかを明らかにするために行った。分析には多重線形回帰分析を用いた。

結果:単変量解析の結果から、内的環境因子はHNCパフォーマンスと有意な関係があった。多重線形回帰分析から、特に内的環境因子のうちの管理要因(稼働ベッド数や、外来/入院患者比)に有意な結果が得られた。組織文化要因(HNCナースの熱意)は重要な因子であった。

結論:韓国内の限られたマーケットサイズであっても、病院を主体としたHNCの発展への重要な因子は、外的因子よりも内的因子に起因していることが明らかになった。特に内的因子の中でも、病院の管理要因(特にナースの熱意)が最も重要であることがわかった。

キーワード:環境要因(Environment Factors)、病院主体の在宅看護ケア(Hospital-Based Home Nursing Care)、看護介入(Nurses’Commitment)、パフォーマンス(Performance)◯1

(要旨・本文中◯印の箇所は、クリティークにて言及)

序論

 急速な高齢化に加えて、病院を取り巻く市場状況が変化したことで、一般の急性期病院のマネジメント戦略が変化しつつある。現在の医療市場は、亜急性期ケア施設の利便性や医療のさらなる効率化を求められ、急速な高齢化によって医療ニーズが変化することで、急性期後の慢性疾患への治療が急速に求められている。市場の需要に対処し、この契機を活かすために、病院の経営陣はHNCのサービス拡張や多様化の流れに乗って、HNCビジネスへ参入し始めた(Smith & Reid 1986)。

 韓国のHNCサービスには、地域HNCサービスと病院主体のHNCサービスがある。前者は病院主体のHNCサービス以前に発足し、地域在住の高血圧や糖尿病などの慢性疾患患者の管理に焦点を当て、これらの状態の悪化予防を目的としている。また、地域の健康機関に基づいて機能している。一方、病院主体のHNCは、病院の市場状況が変化した結果として生まれ、入院の代替として特徴づけられる。地域HNCサービスの代表的な例は、イギリスやスカンディナビアのようなヨーロッパ諸国で実施されている。

 これらのサービスは、病院ではなく地域の公共機関や慈善団体によって実施され、入院治療を行うほどではない市民のニーズを満たすためにつくられた。近年のイギリスでは在宅医療が急速な発展を続けており(Wilson & Parker 2005)、2001年の高齢者に対する国家サービス計画の発表によって、“避けられる入院”の予防のような地域のニーズに応えるべく、幅広い問題提起がなされている。

 今日までに、HNCの市場は病院のビジネスの多様化やコスト削減の観点から、新たな間接的な収益対象として認知されてきている。したがって、さまざまなHNCサービスを実践している組織に焦点を当てた研究が行われており、初期の頃はビジネスの多様化やコスト削減へのアプローチを基に、HNCサービスが新たな収益を得る好機となることについての研究がなされた(Clement 1998;  Kauer & Silvers 1991)。それらの研究に基づいて、利潤追求型HNCや非営利型HNCの組織特有の特徴に焦点を当てた研究(Gray 1993)や、特定の長期治療領域の分析(Giardina et al.1990)、そしてHNCサービスに関する費用効果の分析の研究が行われた(Banaszak-Holl et al.1996)。

 さらに最近では、医療施設の内的環境因子や外的環境因子について考えることで、医療施設の新たな戦略的アプローチが提言された。Wheelerら(1999)は、高齢化や医療マネジメントへの要求の高まりによって、医療分野の産業がどの程度、従来以上にHNCへ注力するようになったかについて、さらには医療産業へHNCを受け入れるための特定の医療戦略がない病院の経営力や格差についても言及した。2001年のShahら(2001)の研究では、アメリカの医療施設の不安定な管理環境は、日々変化する医療提供システムや、そのシステムによる医療の長期化を改善することで、経済的な安定を得る新たな市場となり得ることを分析した。またその研究では、組織因子と医療市場因子、地域因子がHNCの戦略活動に影響することが示された。

 これまで上記のような多くのHNCサービスに関する研究がなされてきたが、HNCの必要性や効率性・効果について述べられている研究ばかりで、HNCサービスに重要な因子を特定するような研究はなかった。本研究の目的は◯2、利潤追求型の組織とは異なる病院の戦略的試みの観点から、病院主体のHNCの結果に影響を与える重要な因子を特定し、その過程でのコスト削減法を明らかにすることである。


病院主体のHNCの発展について

 近年、ヨーロッパやアメリカ、日本のような先進国では、急速な高齢化が共通の問題となっている。そこで多くの先進国では、慢性疾患や高齢者特有の疾患に対処する効果的な管理方法として、HNCサービスを使用するようになった。より効果的なアプローチとして、外来患者と入院患者のケアを統合することで、近年の健康管理支援が進歩し、今までは入院して治療を受けていた患者のケアがHNCによって在宅で可能となった((Persoon et al. 1996; Spreeuwenberg 199)。

 実際にHNCサービスは医療施設の機能の多様化の一翼を担っており、医療システムの提供サービスとして地域での健康管理の役割を果たしている(Bernstein & Gauthier 1998; Murashima & Asahara 2003; Ram et al. 2003; Shah et al. 2001; Wilson & Parker 2005)。

 病院主体のHNCは、各国の文化や政策によって異なるもので、病院によっても異なったサービスとなっている。ここ20年間、コストパフォーマンスや利用者が親しみやすいサービスとしてHNCは評価されている(Cummings & Weaver 1991, Hughes et al. 1997)。近年の急性疾患患者が短期の入院で退院できる一方で、慢性疾患患者の長期入院が増加傾向にあるため、患者中心の良質なサービスを提供するためには、入院治療とHNCの切り替えのタイミングの効果的なコントロールとバランスが大切であるとされる。そのため、今後もHNCサービスに対する需要は増加すると考えられている(Ryu et al. 2005)。


韓国におけるHNCの背景

 韓国では、1989年に国民皆保険が開始された頃より、国民の健康に対する意識は高くなった。さらに経済成長に伴って医療の多様化が進み、高齢化に伴う変性慢性疾患注)患者の数が急増した。結果として一般病院が入院患者で溢れ、長期入院患者数が急増し、より効率的で患者が親しみやすい健康管理システムが求められるようになった。

 韓国での病院主体のHNCは、退院後も病院のスタッフが関わったり、関係施設をその後患者が利用することによって、病院から退院した患者のケアを継続できる仕組みとなった。初期の韓国の病院主体のHNCビジネスモデルは、病院(特に3次医療機関)から患者を早期退院されることで既存のシステムを多様化させて、新たなシステムに置き換えることであった。

 韓国政府からのHNC推奨案や多くの病院がHNCサービスに参加したことで、病院施設によってその規模やサービス範囲、パフォーマンスに違いはあるが、最近10年でHNCは急速に成長し拡大した。しかし依然、各施設間でHNCサービスの規模や範囲やパフォーマンスに多くの違いが存在する。本研究の目的は◯3、財政コスト削減と医療サービスの拡大という観点から、病院ごとの病院主体HNCサービスとそのパフォーマンスを評価して、病院間のパフォーマンスのばらつきを引き起こす因子を明らかにすることである。


方法

デザイン

 HNCのパフォーマンスに影響を与える因子は内的・外的環境因子のどちらかに分類された。内的環境因子には、施設管理要因(施設に関する変数、財政に関する変数、人員資源に関する変数)、施設の主な生産力要因(ビジネス情報管理、製品開発研究)、組織構造要因(宗教、病院分類)、組織文化要因(リーダーシップ、共有価値、スタッフの熱意)がある。外的環境因子には、市場因子とコミュニティ因子がある表1◯4

 分析は、それぞれの因子がHNCのパフォーマンスにどのように関係しているかを調査するために実施した。韓国では、1回の訪問や患者ごとに訪問にかかる費用の請求額に上限がある。そのため訪問回数と病院側の収益は比例しているため、HNCの訪問ケースでHNCのパフォーマンスを評価した。患者構成・手順のタイプ・その手順にかかった費用の点では、HNCを行っている病院間で違いは見られなかった。記述的な相関研究デザインを用いて、横断質問紙調査を実施した。


参加施設

 対象病院のそれぞれの特徴や特性を比較しやすくするために、教育関連施設のみを今回の研究対象とした。韓国病院連盟に登録されている228の病院のうち、健康保険レビュー評価サービス(2006年11月現在)で、HNCサービスを実施している病院として記載されている、173病院すべてが研究対象として選択された。最終的に2006年11月現在、HNCサービスを実施している89の教育関連施設が、今回の研究対象施設に選定された◯5


データ収集と倫理的問題

 韓国の病院連盟が行った研修病院評価と病院認定プログラム、各病院に対するHNCクレームデータ、韓国国家統計局の健康と豊かさの統計結果(それぞれのコミュニティレベルでの地域の所得水準)、HNCの訓練を受けたナースへの調査結果を用いた。HNCクレームデータからは、医療施設の年間の請求総数や訪問回数、患者数を独立変数として使用した。

 病院の収益性分析を行うためは、収支バランスの記録や所得水準を用いて、健康と豊かさの統計結果からは、それぞれのコミュニティレベルでの地域の所得水準を算出した。教育関連施設の地域市場シェアを検討するために、病院の所得調書から医療収益結果を用いた。市場競争率を検討するためには、各病院に指定された管轄区域内すべての病院の累積収益から市場収益シェアを算出した。病院の人的資源や病院分類(第3次医療機関なのか、一般病院なのか)は、各施設の量的変数として分析に用いた。89の教育病院のHNCのナースに対する調査は、すべて2007年2月から3月に実施し、その結果は質的独立変数として用いた◯6

 本研究は、個人のプライバシーに関する質問は分析に使用せず、データはまとめて各施設から収集したため、倫理的問題はなかった。


データ分析

 独立変数のばらつきを分析するために、相関分析と平均の解離性を検証した。連続変数ではパラメータの相関分析の両側検定として、ピアソンの相関係数を用いた。順序変数の場合は、ノンパラメトリック相関分析の両側検定として、スピアマンの相関係数を用いた。2つの独立したサンプル間の平均の解離性を検証するために、t検定を実施した。

 それぞれの変数の相関や相違を基にして、HNCパフォーマンスに影響を与える因子の検討に多重線回帰分析を実施した。サンプル数が89施設で比較的少ないため、すべての独立変数を同時に投入する代わりに、適合性が高く統計的意味がある重要な変数から投入した。さらに、統計的に有意ではない変数が残るまで分析を継続する、ステップワイズ法を実施した。回帰分析は管理資源・主要な特性・組織構造・組織環境・市場因子・地域因子の各項目で実施された。その後、それぞれの因子が有意であると見なされた場合、内的環境因子と外的環境因子は重回帰分析に投入され、HNCパフォーマンスに影響を与える重要な変数を抽出する。

 独立変数間で相関が見られた場合、独立変数がどのように関連しているのかを明らかにする多重共線性を確認するために◯9、独立変数のトレランスとVIFを算出した。訪問ケースについての独立変数は、結果に適した対数変換を行い、正規分布に基づいて分析を実施した。有意水準はP<0.05とし、SPSS 12.0 for windowsを使用した。


妥当性と信頼性

 ツールは本研究のために開発した。本研究で用いた調査は患者、システム開発者、ヘルスケア専門家で構成された。クロンバック係数は0.87であった◯10


結果

一般統計

 それぞれの変数値の平均と標準偏差は 表2 に示した。カテゴリー変数の場合は、各カテゴリーに帰属している絶対値と各カテゴリー内での100%に対する比率を表記した。対数変換することで、各病院の変数の分布は正規分布に従っている。


HNCの単変量解析の結果

〈仮説:HNCパフォーマンスは病院の管理要因によって変化する〉

 キャッシュフロー以外のすべての管理要因(稼働ベッド数、外来/入院患者比率、ベッドごとの医師数、ベッドに対するナース数、ベッドに対する医師とナースの数)において、統計学的に有意な相関が得られた。また、すべての因子はピアソンの相関係数が0.5以上であった。 


〈仮説:HNCパフォーマンスは病院の主な生産力に関する因子によって変化する〉

 ビジネス情報管理因子では、ビジネス計画と資産運用、患者管理システムのシステム化の因子は、システムの機能としてのグループの中で有意差が見られた。さらに3つの異なったビジネス情報管理変数を統合したHNC管理システムは、HNCのパフォーマンスに意味のある関連性を示した。製品開発研究に関する因子(さまざまなHNCサービスの発展と応用、サービスの標準化、医療技術の進歩に伴ったHNC利用頻度)では、すべての因子とHNCパフォーマンスは有意に相関があった。


〈仮説:HNCパフォーマンスは組織構造因子によって変化する〉

 内的環境の組織構造因子の指標としての宗教や病院分類に関しては、病院分類では有意な結果が得られ、宗教においては有意な結果は得られなかった。


〈仮説:HNCパフォーマンスは組織文化因子によって変化する〉

 内的環境因子の下位項目である組織文化因子の中で、HNCを始めた時期は最初にHNCを開始した病院と他の病院では結果が異なった。HNCに対する医師の関心や、HNC活動に対する施設のCEOのサポート、HNCナースの熱意では、HNCナースの熱意のみがHNCパフォーマンスに有意に関連があることがわかった。つまり、組織文化の独立変数の中で、HNCの開始時期とナースの熱意のみが、HNCパフォーマンスと有意であることが明らかになった。


〈仮説:HNCパフォーマンスは外的環境因子によって変化する〉

 市場因子の測定指標であるハーフィンダール-ハーシュマン指標(HHI)と、集中度3は有意な相関を示した。さらにピアソンの相関分析より、すべての因子において相関が得られた。つまりコミュニティ内での競争が活発化するほど、訪問回数は増加することがわかった。HNCに対する患者の選好や、患者サイズや病気の特徴への要求、地域のGDP(総生産)は、すべてHNCサービスと有意な相関が得られた(表3)


HNCの多重線形回帰分析の結果

 独立変数は年間のHNC訪問ケースとし、単変量解析では内的環境因子(管理要因・主要な生産力要因・組織構造要因・組織文化要因)と外的環境因子(市場因子とコミュニティ要因)について実施した。単変量解析で有意水準を満たした変数のみで、それぞれの因子の下位項目で多重線回帰分析が実施され、再び有意水準を満たした因子のみで他の線回帰分析を実施する。結果として、稼働ベッド数と外来患者/入院患者比のみが統計学的に有意な変数として抽出された(表4)


考察

 1日の医療費は入院初期が最も高く◯13、入院が長期化するにつれて安くなる。そのため初期での退院は病院経営の面からも好ましく、それは待機患者にとっても入院の機会が増加することになる。さらに韓国では、入院患者が第3次医療機関に集中する傾向にある。その結果、大規模病院のベッドの占有率が高くなり、早期退院の勧告や患者の在院日数の管理が必要となる。言い換えれば、病院の総所得を増やし、患者の在院日数を管理するために、ベッドの回転率を上げて早期退院を推奨する。そのため退院後も継続的に患者の健康を管理できるような、在宅での健康ケアサービスが必要となる。

 本研究の結果から、稼働ベッド数が多い病院ほどHNCの訪問サービスが有意に増加することが明らかとなり、この結果はShahら(2001)が報告した研究結果(400床以上のベッドがある病院は、100床以下の病院のHNCサービスの7倍もHNCサービスを実施していたという結果)と一致している。

 入院患者に対する外来患者の比の相関は0.5を超えており、かなり有意な正の相関を示した。つまりこれは、入院患者よりも比較的外来患者に対して入院を勧める傾向にある病院は、HNCサービスを有意に実施していることを示している。この結果は、Wistowsらが2000年に報告した研究結果(外来患者に対して入院を強く勧めるほど、入院患者の退院を促し、HNCサービスの利用が増加するという結果)と一致している。

 キャッシュフローとHNCパフォーマンスでは負の相関が見られたが、有意な結果ではなかった。これはWheelerら(1999)の研究結果(現金資金の少なさは病院のビジネスの多様化を促進するという結果)と異なっているが、本研究の結果は妥当である。本研究とWheelerの研究では、組織の資金源の少なさという内的な側面は一致しているが、HNCは資金源を増加させるために実施するサービスではないという点で異なっている。

 韓国のHNCサービスは1カ月ごとの支払額に限度があることが特徴であり、訪問ごとの支給額は低コストである。そのため、HNCサービスを病院から切り離されたビジネスとして捉えることはほぼない。管理資源に関する下位項目のうち、財政面に関する因子以外はすべて有意な結果が得られている。

 1ベッドにごとの医師とナースの数は、HNCパフォーマンスとかなり有意な正の相関が見られた。この結果はShahら(2001)が報告した研究結果(スタッフの数と比較してナースの数が多い病院ほど、長期の医療サービスを専念して実施しているという結果)と一致している。病院のスタッフ、特にナースの数が多いほどHNCサービスの利用が活性化され、有能なナースがいることは結果としてHNCサービスの向上や病院の医療サービスの多様化へつながる。

 病院の主要な生産力については、他の内的環境因子と比較してHNCパフォーマンスに関する影響は少なかったが、3つの異なるビジネス情報管理変数(ビジネス計画・資産運用・患者管理のシステム化)を1つに統合したHNC管理システムに関しては、有意にHNCパフォーマンスへ影響していた。これはDahlbergとKoloroutis(1994)の主張(病院は設備やコンピュータシステム以外の経営を強化する戦略を持つべきだとして、HNCのためにシステム構築の必要性を説いた)と同じである。 

 Wheelerら(1999)は、HNCサービスは病院の所有者や特徴によって大きく異なるという結果を報告しており、本研究の結果もまた病院分類によってHNCパフォーマンスが異なることを示した。この結果は、病院分類が異なることで、HNCサービスに対する病院の興味や関心が異なることを示している。カトリックの病院でのHNCパフォーマンスの向上は見られなかったが、カトリックと他の宗派でのHNCパフォーマンスを比較すると、p=0.052と有意水準に近い値を示した。

 この結果は、宗教的理由は病院の文化や意思決定に影響しているため、カトリックと他の宗派の病院ではHNCに対して異なった意思決定プロセスがあるとした、筆者の予測と一致している。実際、韓国のカトリック教会は、地域のHNCだけでなく、病院主体のHNCに対しても強い興味や関心を示している。

 HNCのためにシステム構築の必要性を説いたDahlbergとKoloroutisによれば、病院主体のHNCのシステム化に影響する因子は、病院の組織としての目的、医師のサポート、HNCに従事するスタッフの能力、スタッフ間の信頼、必要な物品の所有状況であった。その中でも、病院の医療スタッフの協力とHNCへの彼らの認識が、HNCビジネスの成功にとても重要な要因であるとした。

 本研究では、組織文化に関する因子の中でナースの熱意のみが有意に正の相関を示した。すなわちHNCナースの仕事への関わりや満足度は、HNCサービスそのものの質に影響するということを意味する。この結果は、Purkisら(2001)の先行研究(自発的で問題意識と責任感を持っているHNCナースは仕事ぶりがよいという結果)、Olssonら(2001)の研究結果(HNCサービスに関わるナースやスタッフと、その患者や患者家族の間の親交の深さは、HNCサービスの満足度の違いに影響するという結果)と一致しているため、本研究の結果は意味深いものである。つまり、HNCナースの仕事への関わり方や満足度は、HNCパフォーマンスへ影響することが明らかになった。それゆえ、HNCナースの重要性を理解し、彼らの仕事を支援すべきである。

 ヘルスケアサービスでさえ、市場原理への適応はある程度避けられない。ヘルスケアを行う者が継続的に増加することで、市場の競争は活性化されることが予想できる。本研究では、HNCサービスを提供している病院間の競争が活発になれば、HNCサービスのパフォーマンスはさらに向上することが明らかになった。この結果は、Shahら(2001年)が明らかにした、競争市場にある病院はHNCサービスに特化しているという結果と一致している。

 単変量での相関分析では、内的環境因子も外的環境因子も従属変数と相関が見られたにもかかわらず、多重線形回帰分析では外的環境因子よりも内的環境因子にHNCパフォーマンスとの有意な結果が予測された。しかし、すべての環境因子について見ると、外的因子よりも内的因子のほうがHNCパフォーマンスに影響している理由は、韓国市場の小ささが関係しているかもしれない。

 アメリカでは◯14、HNCパフォーマンスとの関係について外的環境因子と内的環境因子を両方同時に分析したところ、市場競争・年齢・所得レベルのような因子も含む外的環境因子は、HNCパフォーマンスの違いや病院の総収入の多様化戦略に有意な違いをもたらすことがわかった(Shah et al. 2001; Wheeler et al. 1999)。これは国家により特徴が異なっているため、韓国での市場では外的環境因子よりも内的環境因子のほうが有意にHNCパフォーマンスに関係していた結果は不自然なものではない。

 この点が今回の研究の限界ではあるが、本研究ではHNC患者の特徴を考慮して内的環境因子と外的環境因子両方を説明変数とするデザインとした。ほとんどすべての患者は長期医療サービスを必要としているため、治療を受ける施設には自宅近くの病院を選択することが予測される。そのため地域の特徴は、一つの生活ゾーンに限定した市場でのHNCサービスに影響する因子◯15として考慮されるべきである。

 患者の完治を見届けるまで、継続して病院が退院した患者をフォローする新たなサービスを確立する意義は、それだけには留まらない。例えば、継続してフォローしていた患者に再入院が必要となった場合、その患者は他の競合病院に行くのではなく、退院後もつながっていた病院へ戻る可能性が高いこと。また、病院主体のHNCサービスを外来患者用サービスとして組み込むことで、患者の外来受診が終了した後も疾患の状態を管理することができ、退院後でさえも患者と病院間のかけ橋の役割を果たすだけでなく、コミュニティでの医療ニーズも満たすことが可能である。


結論

 本研究は、韓国という限られたマーケットサイズではあったが、病院主体のHNCサービスの発展に関する重要な因子は、外的環境因子よりも内的環境因子(病院管理要因や組織構造要因、組織文化要因)にあることがわかった。病院管理要因・組織構造要因・組織文化要因は、HNCの成長へ有意に貢献した。内的因子の中で、特に病院管理要因は最も重要な因子であった。つまり、病院はベッドの回転率を上げ、入院患者の高いニーズに応え、患者ごとの利用できる人的資源を増やすほど、HNCパフォーマンスは向上することがわかった。

 本研究は、急性期病院のベッド稼働率へのプレッシャーを軽減し、患者の早期退院計画を達成させる効果的な解決法としてHNCを提案する。新規入院患者に対するベッド手配に苦労している急性期病院にとって、局所的な手術からの回復患者や、介護者の意思による入院であることが予測される高齢者患者への効果的な対処法として、早期退院計画は捉えられている。要するに、HNCは急性期病院の入院患者管理システムの効果的なモデルの一つとして用いることができるのである。

 結果としてHNCは、病院管理システムの多様化によって総収益を強化する施策と捉えられるだけではなく、ベッドの稼働率を上げて支出を軽減することで、非直接的に収益を強化して病院全体の総収益レベルを向上させる効果的な施策と考えられるべきである。それゆえ、急性期治療病院は歳入を増やせて成長する市場へ参入でき、管理リスクを低減できるようになる。

 HNCのさらなる成長のためには、医療施設のHNCへの適応性や実現可能性について熟考しなければならない。また、実際に現場で働いているナースの役割について軽視すべきでない。実際にHNCナースの組織的な特性から、彼女たち以上にHNCパフォーマンスへ影響する因子はなかった。また、ナースの熱意は向上させることも低下させることも可能で、病院主体のHNCサービスの成功には重要な意味を持っている。それゆえHNCナースは、仕事に責任感を持って業務をこなせるようサポートされるべきである。業務の多様化に対応してHNCを実行することで、それは経済や実用的な面で費用便益効果を得ることになるだろう。


資金調達について

 この研究は、いかなる公的機関や営利・非営利部門からも特定の補助金を受け取っていない。


利害の対立

 利害の対立は著者らによって申告されなかった。


執筆分担

 JWNとYDKおよびSJYは、研究の構想に関わった。JWNとYDKはデータ収集を実施した。JWNとSJYはデータ分析を行った。YDKは原稿を作成した。YDKとJIHは重要かつ知的な内容の論文に仕上げるための批判的改訂を行った。JWNとYDKは統計についての専門知識を提供した。YDKとSJY、JIHは管理・技術・資料面での支援を行った。YDKは研究を監督した。


●引用・参考文献

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この論文のクリティーク  |  編集部のページ  |  INR日本版  | INR英語版  |  日本看護協会出版会

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