入院児の親の飲酒パターン:短期介入研究の結果

Critique:

Bjerregaard L., Rubak S., Høst A. & Wagner L. (2012) Alcohol consumption patterns among parents of hospitalized children: findings from a brief intervention study. International Nursing Review 59(1), 132–138.

評者:Amanda Hindle, BSc

エダンズ グループ ジャパン株式会社 福岡オフィス シニアランゲージ エディター

クリティークの翻訳:エダンズ グループ ジャパン株式会社


※ このクリティークの原文(英語)は こちら

※ 掲載元:「インターナショナル ナーシング レビュー日本語版」158号, P.73

論文の概要

 今回対象とした論文は、著者のBjerregaardらが看護職員の短期的介入を通して、入院している子どもの親たちがアルコールの摂取パターンに関してどのように認識しているかを研究したものである。動機づけインタビューの手法を用いて、介入への感じ方だけでなく、いかにこの介入が長期的な親の行動の変化に影響したかを評価することができている。幅広い読者に関連する臨床的問題について取り組んでいる非常に興味深い研究である。

 全体的に、論文自体はよく書けており、説明も十分にできている。結果をすぐに臨床の場で応用することも可能である。本クリティークでは、この論文の長所を論じるとともに、より改善できたのではないか、またはもう少し内容を拡大できたのではないかと思われる箇所についても論じることにする。


構造と内容

 論文を書く時は、構造を確実にすることが重要である。構造がしっかりとしていれば、アイデアをまとめて情報を論理的に示すことができ、一貫性のある内容を読者に提供できる。全体的に見て、対象の論文は構造がしっかりしていて理解しやすい。しかし内容が改善できたであろう箇所も見受けられるので、その点について以下に述べることにする。

 対象論文のアブストラクトでは、研究の概要が明確に示され、結果が本文と同じ順番で示されているのでわかりやすい。しかし背景を目的の前に置いていれば、よりよかったのではなかろうか。看護職員によるアルコールに関する介入を親がどのように感じているかは、それがほとんど知られていないことを初めに説明していれば、研究の具体的な目的へと、より論理的につながったであろう。

 背景のセクションでは、世界的な負担となっているアルコールの乱用について、またそれが子どもをいかに危険な状態にしているかがうまく説明されている。入院している子どもの親は、非常に高い割合でアルコールに対する問題を抱えていることが知られているが、この問題に対処する際に、対処の仕方について訓練を受けていない、または個人的に偏見がある看護職員については、大きな障壁が存在していると学ぶことができる。次に述べられている短期的介入や動機づけのインタビューについての背景の説明は短いが、導入部としては適切であり、研究の目的へと上手くつなげている。

 方法のセクションはよくまとめられており、小見出しをつけることで、研究デザインや用いた方法がよりわかりやすく説明されている。著者らが看護職員に対してどのようにインタビューの訓練を行い、参加者がどのように関与したかが、非常に明確に示されている。しかし、データ分析の箇所は、文章が複雑かつ表現が一般的過ぎるので、やや理解しづらい。

 次にこの研究の倫理についての承認に関して、これは適切に述べられている。委員会からの承認や、ヘルシンキ宣言の遵守、対象者からの同意を得ていること、守秘義務についての概要が述べられている。倫理規定の遵守は、純粋な観察研究であろうと臨床治療を伴っていようとも、ヒトに対する研究を実施する上で非常に重要である。著者らが示したように、倫理に関する承認についての情報を1つのセクションで示すことを強くお勧めする。

 結果のセクションもよく書けている。著者らは、研究から得られた3つの主なテーマについて述べている。①親は看護職員からの敬意と心からの関心を感じた、②介入により親がアルコールの摂取について反省した、③継続的な反省を行うことで、多くの親の中で行動の変化が起こった。

 各研究テーマは、それぞれ小見出しをつけて説明されている。情報の提示や異なるアイデアを区別できる形で示す場合は、小見出しの使用が非常に有効である。著者らは考察のセクションでも、結果のセクションと同じ順序でこれらの知見について述べているので、論文全体を一貫性のあるものにしている。

 また、参考文献をうまく取り入れ、動機づけのインタビューが、特にアルコールの乱用に関する質問に対していかに親に対するプラスの効果を生み出したか、という背景が説明されている。動機づけのインタビューで用いられた、肯定的な反応につながる重要な要因と思われる、特定の手法について考察していたのは興味深かった。特に介入のタイミングや、具体的な反応に向けた動機づけ、看護職員の性格的特徴といった要因が取り上げられていた。

 動機づけのインタビューを、その他の臨床分野で広く用いることに関しては、親の内省を引き起こし変わろうとする意欲を引き出す上で重要である、と判断した要因の分析を行うと有益であろう。これらの要因を分析していれば、この手法が有用と思われる臨床状況の、より詳しい例を提供することができていたかもしれない。現状では、示されているとおりすべての状況において適用できるわけではないかもしれないが、医療従事者の一般的な使用として動機づけのインタビューを提示したのみに終わっている。

 次に懸念事項として考えられる点を挙げる。考察のセクションでの小見出しが十分に内容を説明するものとなっておらず、やや反復的な点である。このセクションは、まず研究の長所と限界を考察しており、この点は申し分ない。しかし「詳細な結果」という見出しからは、親の反応について発見した内容のさらなる展開が書かれていると推測されるが、むしろ動機づけのインタビューを用いる利点について、深く考察した内容が含まれていた。内容自体は興味深く有益な情報であるから、考察の焦点が何かを示す、よりわかりやすいタイトルをつけたほうがよかったであろう。

 さらに、考察のセクションの最後の小見出しは「臨床実践と今後の研究への示唆」となっているが、結論の見出しとほぼ同じ見出しである。考察の内容として適切ではあるが、これら2つのセクションは区別しておくべきである。

 最後に、研究の目的として示されたものの1つに、生活習慣の問題に関係する行動の変化について取り組みをいかに強化していくかということがあった。しかし、実際にはこれは明確に示されておらず、特定の事例も挙げられていない。したがって、考察した内容を小見出しをつけて短く記述していれば、より論文全体がまとまりあるものになっていたであろう。

 さらに見出しに関する懸念を挙げると、論文のタイトル自体がやや不的確であり、誤解を招きやすいのではないかと感じる。現在の論文のタイトルは、入院している子どもの親における、アルコールの摂取パターンを研究するものであることを示している。しかし実際の内容は、生活習慣への介入には、動機づけのインタビューが有用であることや、この手法に対する親の感じ方のほうに、より多く焦点を当てている。タイトルにより正確な意図を反映させていれば、読者に対して研究の焦点をより確実に明確に示すことができたであろう。


言語とプレゼンテーション

言語

 読者が明確に理解できるように論文を執筆することが、優れた論文執筆における主な目標の1つである。論文で何かを表現しよう、言いたいことを伝えようとする時には、この目標は困難な課題となり、必要以上に文章が複雑になってしまうこともある。今回の論文ではややぎこちない表現があり、若干読みづらい箇所が見受けられた。しかし全体的な英語のレベルは非常に高い。論文の執筆には、英語を母国語とする者でさえ困難に感じる部分もあるのである。

 一文が長いと読者にとっては理解しづらい。一文の終わりにたどりつくまでに、多くの情報を処理しなければならないため、文の前半部との関連性を忘れてしまうことも起こり得る。論文で誰もが最初に読むと考えられるのが、アブストラクトの最初の文であるが、今回の論文は最初の一文が50ワードで書かれている。研究の2つの目的の概要を述べているが、これは簡単に2文に分けることが可能である。そのほうが読者にとってはより読みやすくなり、目的の進行を論理的に示してアブストラクトの質をより高めることができるだろう。この場合、親に実施した介入の効果を最初に述べ、次の文でそれが長期にわたる行動の変化にどのようにつながったかを述べるとよいであろう。

 また、この論文は表現に不要な繰り返しが数カ所見受けられ、一文の中に言葉を繰り返し用いていた。伝えたい内容を明確に示したいがために繰り返したのであろうが、必要でない限り、言葉の反復使用は効果的というよりむしろ阻害要因となる。言葉の選択もまた、論文全体を通してやや問題がある。全体的には読みやすいが、著者らが用いた特定の言葉が最適なものとは言えない場合があり、やや理解しづらくなっている。例えば「alcohol-attributable burden」のような複合形容詞の使用は不適切に感じるし、他の表現を用いたほうが読みやすかったであろう。

 さらに、参加者へのインタビューやデータ分析の方法についての記述で非常に冗長かつ曖昧、複雑な箇所があった。専門分野が異なる者としては、一般的な用語での説明が多く、方法が十分具体的に説明されていないと感じた。また方法のセクションでは、多くのアイデアをコンマでつなげて長い文にまとめられているため混乱した。


図表

 この論文中には図表が使われてはいないが、補足資料として3つの表を含めている(翻訳記事では本文中にこれら補足資料が含められている)。図表を適切に用いれば、研究内容に対する読者の理解を深めることができる。この論文は定性的研究であり、あまり多くのデータを含んでいないことを考えると、図表がないからといって問題であるとは思えない。補足資料にある3つの表で興味深い付加的な情報を示し、読者にインタビューの過程やその中で得られた親からのコメントや意見を、より詳細に説明している。これらの表は大きすぎるので、本文には含められない、または本文に含めたとしても付加価値を加えることにはならなかっただろう。よって、補足資料として示したことは適切であり、この論文に図表の追加は必要ではないと考える。


裏づけのための引用や参考文献

 インタビューに基づく研究に、裏づけとなる引用を用いる場合は、用心しなければならない場合がある。結果を説明する裏づけとなる引用に、過度に依存しすぎないことが重要である。文章の流れを悪くし、有意義な考察にはつながらないからである。論文の著者らは、自分たちが行ったインタビューの結果をうまく要約し、主要なポイントを考察の中で適切に取り上げている。

 親からのコメントは補足資料で示されている。しかし観察した主なテーマのそれぞれについて、引用を少なくとも1つは含めたほうが有益ではなかっただろうか。そうすれば読者は、論文著者がまとめた概要だけに頼ることもなく、また補足資料にある発言を評価する必要もなく、参加者の実際の発言について自分で判断することができたであろう。

 先述したとおり、参考文献を効果的に用いて裏づけていた点は素晴らしい。アルコールの乱用についての世界的状況や、介入の際に用いた手法についてわかりやすく説明されており、研究のより幅広い適用可能性を理解するのに非常に役に立つ。参考文献の多くは比較的最近のものであり、説明している背景情報との関連性を示している。


English Tips

 優れた執筆力の習得は難しいものである。英語を母国語とする科学者ですら、アイデアを明確かつ簡潔に表現するのは非常に困難な場合があり、悪い習慣に陥ってしまうことがある。論文を書く時は、スタイルを明確かつ簡潔にすることを念頭に置くことが重要である。また、口語的ではなく、より形式的に文章を書くことが必要である。


不適切な表現

 文章を読む時、読者はある種の推測をしながら読み進める。文章の主題や、著者が伝えようとしている内容を理解するために、主題の書かれている位置、強調されている内容が書かれている位置を、無意識のうちに決めて読んでいることがある。したがって、読者に内容が正確に伝わるように文章を構成することが重要なのである。冒頭で文の主題を紹介し、読者に考えてもらいたい内容を最後に強調しよう。能動態を用い、複合形容詞の使用は避けよう。動詞があまりなくても技術的に意味を成す文も存在し得るが、動詞を含めて一文を明確にさせることが重要である。一文を短くすることも有効であるが、内容が理解されるように書くことのほうが、より大切である。


口語体とスラング

 日常会話にはスラング(俗語)がかなり多用されている。スラングのような気軽な表現は、大抵非常に意味のわかりやすい表現ではあるが、それは特定の地域や集団に対してのみであるという欠点がある。したがって、読者によっては容易には理解できない場合がある。さらに、スラングは科学論文のような、より形式的な文章の中で用いられるとくだけ過ぎるか、または粗野な印象を与えがちである。読者は論文の表現に気を取られると、信頼できるデータが提示されていたとしても、信用しなくなる可能性がある。



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Advice:〈図表と補足資料の使用〉

①図表

 読者に研究結果を理解してもらうためには、図表の使用が大いに役立つ。これらを使うと、大量のデータを素早くかつ効果的に示すことができる。複雑なデータがある場合は、すべてを文章で説明するよりも、図表を用いることでより明確になる。

 読者はアブストラクトを読んだ後は、図表に目が行きがちである。したがって、図表では最も重要な研究結果を示すべきであり、容易に理解できるように作成する必要がある。図表に興味を引かれて、論文全体を読み進む読者もいるかもしれない。

 以下に示すアドバイスに加え、出版社によっては、図表に特定の要件を指定している場合があるので、適宜フォーマットや要件を確認するようにしよう。

 まず、図表と文章の中でデータの説明を重複させてはならない。単純な記述できるような統計値は文章中で示しつつ、複雑な情報は図表で補おう。

 ではよい図とはどのようなものであろうか? 考慮すべき点は多々あり、取り扱うデータの種類にもよる。しかし覚えておくべき重要なポイントは「シンプルにする」ということである。「色を変えてみよう」「データを多く含めよう」などと思うかもしれないが、結果的に複雑になり過ぎたり、理解しづらくなったりする場合がある。

 これを避けるには、図をいくつかのパーツに分解してみる方法がある。データを表やグラフなどの異なる方法で示し、複数の異なる形式のデータとしてまとめて示すとよい。例えば研究で取得した画像を示したい場合に、観察の傾向を棒グラフやその他のグラフで補足説明することができる。どのような形式の図を用いようとも、軸や近似曲線、縮尺、統計的有意水準を含むすべての項目には必ずラベルをつけよう。

 表に関しては通常、図よりも作成が容易である。情報を多く含め過ぎないことが重要である。読者の興味を引くような最も重要な結果だけを示そう。上位グループ、下位グループといったように階層ごとにデータを分類すると、データをより有効的に表の中で示すことができ、理解しやすい表を作成することができる。一般に小さめの表のほうが好まれるが、必要であれば気にせず大きな表を用いよう。

 キャプションもまた図表作成には欠かせない項目である。適切なキャプションをつけて、その図が示す内容の概要を読者に明確に伝え、本文とは別に独立したものとなるようにしよう。図中で略語を用いる場合は、キャプションですべてを定義しよう。表の場合は略語の定義を脚注に示してもよい。

 その他に、記号(例:著しい身体的変化を示す白の矢印)や色分け(例:赤線、青い破線の丸囲み)などを用いて特徴を強調させた場合は、すべてキャプションで説明しておこう。


②補足資料

 投稿しようとするジャーナルによっては、含めることができる図表の数が制限されている場合もよくある。もしくは発表したい情報量が多すぎてジャーナルの誌面を占有しすぎる場合もあるだろう。

 例えばマイクロアレイデータのように、本文へ含めることが認められていない特定の項目について、制限が課されている場合もある。このような場合には、図表を補足資料にすることを検討してもよいだろう。

 補足資料はオンラインでのみ公表されるケースが増えている。オンラインだけでも、その研究に対するより詳細な情報を求める研究者にとっては情報を取得することができ、また補足する数に制限がない場合が多いので都合がよい。


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アマンダ・ヒンドル

profile:2003年にSimon Fraser大学で生物学理学士取得。規制科学、製薬技術、学術関連のジャーナル出版の経験を有する。テクニカルライター兼エディターとしてカナダ保健省の治療用製品総局に勤務。またイギリスのケンブリッジでもDevelopment誌およびJournal of Cell Science誌の制作担当編集者として活躍。ヒトの健康と水生毒物学者として数年にわたるキャリアがある。

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