JBI ── Evidence Summary

〈急性・重症患者看護〉

気管チューブの抜去に関する最良のエビデンスは?

 

Endotracheal Tube: Extubation

Yimei Li MBBS, MPH

14 August 2017

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.87

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

気道挿管である人口気道の抜管は、患者が機械的換気を必要としない最終段階である。抜管が不必要に遅れると、人工呼吸器関連肺炎(VAP)のリスクが高まり、ICU在棟日数と入院期間が長くなり、死亡率が高くなる。一方で、抜管の失敗(最大20%の患者に発生する可能性がある)はICU在棟日数と入院期間の増加、コストの増加、気管切開の必要性、長期急性期ケアの必要性、死亡率の増加に関連している1

 

  • 十分な換気と酸素化を維持するための機械的換気が必要なくなった時、抜管の可能性の準備として、気道を保護するための患者の能力と気道開通性を評価する必要がある。前者は、咳嗽、意識レベル、分泌物の量の評価であり、後者はカフリークテストである2 (Level 2)
  • 自発呼吸試験(SBT)に合格した患者の研究では、指示どおりに咳嗽ができなかった患者や、咳嗽時の最大呼気流量(PEF)35L未満が認められた患者に抜管障害の可能性が高いことが分かった3 (Level 2)
  • 別の研究では、咳嗽時の最大呼気流量60L/min未満、または分泌物が2.5ml/Hを超える場合、抜管に失敗する可能性が高いことが明らかになった1 (Level 2)
  • 挿管中患者の咳嗽の強さを測定するいくつかの方法が報告されている。気管チューブを人工呼吸器回路から取り外し、インデックスカードなどのカードを気管チューブの近位端から約1~2㎝に保持する。そして患者に咳をするよう指示する。カードを3~4回の咳で湿らせることができなかった患者はできた患者より抜管に失敗する可能性が3倍高かった2 (Level 2)
  • その他の方法は次の研究で報告されていた。肺活量計が人工呼吸器回路に取り付けられ、患者に咳をするよう指示する。咳嗽時の最大呼気流量を測定する。PEFが60L/min未満の患者は、それ以上の患者よりも再挿管が必要になる確率が5倍高かった1 (Level 2)
  • 上記の研究で、4つの項目(開眼する、物質を追視する、手でつかむ、舌突出する)を完全に行えないことが抜管失敗のリスク増加と関連していることが分かった。著者はさらに、3つのリスク因子:咳嗽時の最大呼気流量の減少(60L/min未満)、分泌物の増加(2.5ml/H以上)、神経機能障害(上記の4項目の障害)がすべて存在する場合、抜管失敗の発生率は100%であったが、このリスク因子が1つも存在しない場合は3%であった1 (Level 2)
  • 抜管前のカフリークテストは、気道の開通性の低下を検出する最も一般的な方法である。抜管後の喉頭浮腫の危険因子には、挿管期間の延長、高齢者、大きめの気管チューブ(男性で8㎜を超える場合、女性で7㎜を超える場合)、気管チューブと喉頭直径の比率が45%を超える場合、気管チューブの直径に対する患者の身長の比率が小さい場合、APACHE Ⅱスコアの上昇、GCSスコアが8未満、外傷時の挿管、女性、喘息既往、固定不足によりチューブが過剰に動く場合、鎮静の不十分または欠如、誤嚥、経口または経鼻胃管が含まれる4 (Level 1)
  • カフリークの質的評価として、カフを脱気し、気道上部に聴診器を当てて気管チューブ周囲の空気の動きを聴診することが行われた5 (Level 1)
  • 定量的評価としては、カフを脱気し、定量モードの人工呼吸器換気中における呼気一回換気量と吸気一回換気量の差を測定することが行われた。6回以上の呼吸のうち低値3つの呼気一回換気量を平均し、吸気一回換気量から差し引いてカフリーク量を求める。カフリーク量が110ml未満または1回換気量の12~24%未満が、気道の開通性が低下しているかどうかの判断をする基準値として提言された5 (Level 1)
  • カフリークのみが存在しないという因子は、抜管後の喘鳴の予測因子としては不完全である。メタ分析によるシステマティックレビューにより、喉頭浮腫に続発する上気道閉塞の診断、上気道閉塞に続発する再挿管の、カフリークテストの診断精度を評価した。カフリークは抜管後の喘鳴を予測していた(感度56%、特異度92%)5 (Level 1)
  • 喉頭超音波検査は、カフの脱気中に喉頭の気柱(air-column)幅を評価する簡単で迅速かつ非侵襲的な方法である。最近の研究では、リアルタイムの超音波検査を利用して、エアリークと気柱幅を評価した。その結果、抜管後の喘鳴の発生に統計的有意な関係があることがわかった。この超音波検査によって抜管後の喘鳴の可能性を評価する6 (Level 2)
  • 特に、気道閉塞が重度で再挿管が必要となった場合、抜管後の喘鳴が集中治療室での滞在期間を延長する可能性がある。抜管後の喘鳴を予防・治療するため、コルチステロイドが一般的に用いられる。この治療法をシステマティックレビューによって評価した。このレビューで分かったことは、抜管後の喘鳴のリスクが高く、抜管前12~24時間に複数回の糖質コルチコイドを投与された成人のサブグループでは、糖質コルチコイドを単回投与された同様の患者と比較して、抜管後の喘鳴の発生率が有意に減少した7 (Level 1)
  • 上記のメタ分析と同様の試験を含んだ後ろ向きメタ分析のシステマティックレビューが3つある。その結論としては同様であり、抜管計画前の複数回投与レジメン(治療計画)におけるステロイド予防投与により、抜管後の喉頭浮腫の発生率が低下し、重症または高リスク成人患者での再挿管率が低下した8-10 (Level 1)
  • 高炭酸ガス血症患者の抜管後、呼吸不全が発生した場合の救命治療としての非侵襲的換気の有効性を評価した研究がある。抜管後の早期非侵襲的換気が呼吸不全のリスクを減少させ、自発呼吸試験中の高炭酸ガス血症患者の90日間の死亡率を低下させることが分かった11 (Level 1)
  • 呼吸不全があり自発呼吸を開始した530人の選択患者を対象とした12件のランダム化比較研究のシステマティックレビューがある。このレビューが示したことは、非侵襲的換気によって死亡、肺炎、ICUおよび入院滞在期間、呼吸器期間が減少・短縮することであった。非侵襲的離脱は、離脱の失敗および離脱に関連する機械換気の持続時間に影響を示さなかった12 (Level 1)
  • 抜管が成功する抜管前予測因子としての気管チューブのサイズの影響を評価するために、ランダム化比較試験が行われた。この研究では、抜管の準備段階にある人工呼吸器装着中の22人の対象者を募った。肺力学として、呼吸頻度(f)、一回換気量(V(T))、f/V(T)比、食道内圧の陰性変化、圧力時間積(PTP)、呼吸仕事量、吸気開始後100ミリ秒の気道閉塞圧が計測された。 抜管後、これらの肺力学の測定を15分、60分で繰り返し行った。気管チューブのサイズが小さい群では、食道内圧の陰性変化、呼吸仕事量、吸気開始後100ミリ秒の気道閉塞圧の増加傾向は有意でないことが分かった。研究結果では、気管チューブサイズの影響はf、V(T)、f/V(T)比、PTPに多大な影響を与えることも示していた13 (Level 1)
  • 粘着テープまたは気管チューブホルダーを使った、気管チューブを抜管する際の必要な力を評価する研究が行われた。(この研究で評価する理由は、)気管チューブを固定し、致命的になりえる事故抜管または事故移動を防ぐ必要がある。この研究では、十分な長さと幅の気管チューブテープは、気管チューブホルダーと比較して、より大きな力が必要であると結論づけていた14 (Level 3)
  • 麻酔実施の引継ぎが、広域の外科処置における全身麻酔後の抜管の遅延に関連しているかどうかを調査した後ろ向き研究がある。引継ぎを行うケースは、抜管の遅延のリスクが高いことがわかった。また、引継ぎを行うことは日中のケースでは有意な影響があるが夕方のケースでは有意ではないことがわかった。結論としては、「引継ぎを行うことは、手術の終わりに抜管が遅延するリスクを高める有意な独立変数である」ということであった15, p.758 (Level 3)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 4件の前向きコホート研究1-3,6
  • 3件のランダム化比較試験4,11,13
  • メタ分析を含んだ5件のシステマティックレビュー5, 7-10
  • 12件のランダム化比較試験を含んだ1件のシステマティックレビュー12
  • 実験研究14
  • 37,824人の患者を含んだ後ろ向き研究15

 

 

◉ References

 

  1. Salam A, Tilluckdharry L, Amoateng-Adjepong Y, Manthous CA. Neurologic status, cough, secretions and extubation outcomes. Intensive Care Med. 2004 Jul;30(7):1334-9. (Level 2)
  2. Khamiees M, Raju P, DeGirolamo A, Amoateng-Adjepong Y, Manthous CA. Predictors of extubation outcome in patients who have successfully completed a spontaneous breathing trial. Chest. 2001;120(4):1262-70. (Level 2)
  3. Beuret P, Roux C, Auclair A, Nourdine K, Kaaki M, Carton MJ. Interest of an objective evaluation of cough during weaning from mechanical ventilation. Intensive Care Med. 2009 Jun;35(6):1090-3. (Level 2)
  4. François B, Bellissant E, Gissot V, Desachy A, Normand S, Boulain T, et al; Association des Réanimateurs du Centre-Ouest (ARCO). 12-h pretreatment with methylprednisolone versus placebo for prevention of postextubation laryngeal oedema: a randomised double-blind trial. Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1083-9. (Level 1)
  5. Ochoa ME, Marín Mdel C, Frutos-Vivar F, Gordo F, Latour-Pérez J, Calvo E, et al.Cuff-leak test for the diagnosis of upper airway obstruction in adults: a systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2009;35(7):1171-9. (Level 1)
  6. Ding LW, Wang HC, Wu HD, Chang CJ, Yang PC. Laryngeal ultrasound: a useful method in predicting post-extubation stridor. A pilot study. Eur Respir J. 2006 Feb;27(2):384-9. (Level 2)
  7. Khemani RG, Randolph A, Markovitz B. Corticosteroids for the prevention and treatment of post-extubation stridor in neonates, children and adults. Cochrane Database Syst Rev. 2009; 3. (Level 1)
  8. Fan T, Wang G, Mao B, Xiong Z, Zhang Y, Liu X, et al. Prophylactic administration of parenteral steroids for preventing airway complications after extubation in adults: meta-analysis of randomised placebo controlled trials. BMJ. 2008 Oct 20;337:a1841. (Level 1)
  9. Jaber S, Jung B, Chanques G, Bonnet F, Marret E. Effects of steroids on reintubation and post-extubation stridor in adults: meta-analysis of randomised controlled trials. Crit Care. 2009;13(2):R49. (Level 1)
  10. McCaffrey J, Farrell C, Whiting P, Dan A, Bagshaw SM, Delaney AP. Corticosteroids to prevent extubation failure: a systematic review and meta-analysis. Intensive Care Med. 2009 Jun;35(6):977-86. (Level 1)
  11. Ferrer M, Sellarés J, Valencia M, Carrillo A, Gonzalez G, Badia JR, Nicolas JM, Torres A. Non-invasive ventilation after extubation in hypercapnic patients with chronic respiratory disorders: randomised controlled trial. Lancet. 2009 Sep 26;374(9695):1082-8. (Level 1)
  12. Burns KEA, Adhikari NKJ, Keenan SP, Meade MO. Noninvasive positive pressure ventilation as a weaning strategy for intubated adults with respiratory failure. Cochrane Database Syst Rev. 2010;8. (Level 1)
  13. Mehta S, Heffer MJ, Maham N, Nelson DL, Klinger JR, Levy MM. Impact of endotracheal tube size on pre-extubation respiratory variables. J Crit Care. 2010;25(3):483-8. (Level 1)
  14. Shimizu T, Mizutani T, Yamahita S, Hagiya K, Tanaka M. Endotracheal Tube Extubation Force: Adhesive Tape Versus Endotracheal Tube Holder. Res Care. 2011 Nov; 56 (11). (Level 3)
  15. Anastasian ZH, Kim M, Heyer EJ, Wang S, Berman MF. Attending Handoff Is Correlated with the Decision to Delay Extubation After Surgery. Anesth Analg. 2016;122(3):758-64. (Level 3)

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Yimei Li MBBS, MPH. Evidence Summary. Endotracheal Tube: Extubation. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2017; JBI5061. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2017 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

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『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細