本書の初版が刊行されてから6年が過ぎ、これまで多くの看護学生、臨床ナース、教員の方々に活用されてきた。しかしその間にも、看護研究の領域では方法論が洗練され、研究内容が多様化し、倫理的な基準も変わってきたことから、本書も時代の変化を反映する必要性がでてきた。
こうした事情は看護領域だけではなく、医療全体の変革を反映したものである。医学的治療の専門分化が進み、治療が複雑で高度になり、新しい治療は高価なものが増えてきている。患者自身が治療法の選択肢について理解し、どの治療を選ぶかを支援するSDM(shared decision making)という概念も、世界的な医療の流れに適応するものである。
第2版では、EBP(evidence-based practice──根拠に基づく実践)についての新しい説明に加え、SDMについても解説を追加した。さらに、クリティークは誰にでも同じように期待できるものではないことから、教育背景別のクリティークのレベルについて解説する章を設けた。これは、全米高等看護教育協会(AACN)が提唱する教育レベル別のEssential(必要な技術・主要点)を参考にしつつ、日本の教育背景を考慮に入れて検討したものである。
さらに、クリティークの技術的な面も強化した。チェックシートを刷新し、例題論文では新たな文献を取り上げることで多様な看護研究を紹介した。また、研究論文についての基本的かつ重要な内容はこの版でも維持し、おもに紹介する文献を新しいものに更新するようにした。
初版と同様、本書によって看護研究の楽しさをより多くの人々に伝えられ、看護研究の発展の一助となれば幸いである。
2020年5月 牧本清子