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イベントレポート ②

第9回大阪府看護学会 シンポジウム

「コロナ禍の体験から学ぶ、今伝えたいこと」

このほど、「新型コロナウイルスと共に新たな時代を創る~多様化する生活を支える看護~」をテーマに、第9回大阪府看護学会が開催されました(公益社団法人大阪府看護協会主催、2021年12月10日〜2022年1月10日まで完全Webオンデマンド配信で実施)。

 

シンポジウムでは「コロナ禍の体験から学ぶ、今伝えたいこと」をテーマに、さまざまな場で活動する看護職等が体験や思いを語り、危機的な状況のなかで得た知識や学びを視聴者と共有しました。ここでは、本シンポジウムの様子をリポートします。<編集部>

 

 

あらゆる危機に強い地域医療をめざして 西岡美砂子氏(枚方市保健所 副所長)

 

枚方市は、大阪府の北東部に位置する人口約40万人の市。2021年6月中旬から始まった「第5波」では新規感染者数が1日最大100人を超え、保健所の対応はひっ迫した。職員は入院へつなぐトリアージや対応に奔走するなかで、地域の医師会、病院協会や訪問看護ステーションと連携しながら自宅療養者を支援し、人材確保では大学の看護学部からの応援も受けて危機を乗り越えてきたという。

 

こうした「第5波」の経験を、西岡氏は「平時からの顔の見える関係づくりと同時に、有事の際に応用が利く地域医療体制の整備が重要だと実感した」と振り返った。そのうえで、今後について「関係機関との良好な関係づくりや多職種連携、民間事業所との連携にさらに取り組んでいきたい」と語った。

 

 

COVID-19重症病棟実践報告 西村香央里氏大阪急性期・総合医療センター副看護師長)

 

大阪府急性期・総合医療センター(865床)は2020年4月よりCOVID-19重症患者の受け入れを始め、約450症例の搬入、約250症例の挿管患者と21症例のECMO(体外式膜型人工肺)挿入患者の管理を行った。受け入れ開始後すぐに「COVID-19対応マニュアル」を作成し、レッドゾーンで清掃や洗濯を担当する「サポーター」と、グリーンゾーンで検体受取や電話での家族対応を行う「メッセンジャー」の担当を分けるなどの体制を整備。その後も褥瘡予防や肺炎悪化防止のための「腹臥位マニュアル」、面会禁止下でのテレビ電話面会や、患者が亡くなった際の対応を示した「家族対応マニュアル」などの作成に取り組んだという。西村氏はこうした取り組みについて「通常と異なる環境のもとで、患者さんや家族にとってできる限りのことをしようというスタッフの思いがあった」と振り返った。

 

また、看護師のストレス緩和やモチベーション維持のために、清掃業者や他病棟のスタッフの応援など業務負担の軽減にも努めてきた。西村氏は「今後の感染拡大に備えて実践を見直しながら、ウィズコロナ時代への対応を続けていきたい」と語った。

 

 

コロナ禍における訪問看護の課題と学び  松井由加里氏(シャローム訪問看護ステーション管理者)

 

松井氏はCOVID-19の感染拡大が始まった2020年2月から現在までの取り組みを踏まえ、訪問看護の課題として①陽性者対応を積極的に受け入れるステーションが少ない、②対象者によって感染防止策の徹底が難しい、③感染によりすべての在宅サービスが止まり、訪問看護が介入したときには重症化・長期化が見られるケースがある、④重度の心身障がい者や独居の認知症高齢者など入院困難者が顕在化―の4点を挙げた。

 

感染者が急増した「第5波」では搬送先の医療機関が見つからないケースが発生し、「入院先が見つからず救急車が何時間も自宅の前から動けなかったり、救急隊が来ても受け入れ先がなく帰ってしまうというつらい経験をした。今まで長く在宅医療にかかわってきたが、初めてのこと」と自身の経験を振り返った。

 

訪問看護ステーションの感染対策では、感染管理認定看護師からの支援・協力が非常に心強かったという。認定看護師からは研修会の講師や感染対策の動画撮影の監修など、多岐にわたる支援を受けた。また、複数のステーションで陽性者に対応したり、COVID-19対応に不安がある他のステーションを支援するなど、事業所の枠を越えた実践も広がった。松井氏は、コロナ禍での学びとして「訪問看護は地域資源という意識を持てたことが非常に大きかった」と言い、「訪問看護の立場から医療と地域、介護をつなぐ架け橋となっていきたい」と意気込みを語った。

 

 

福祉と医療をつなぐ役割の再確認──障害福祉サービス事業所での陽性者支援を通して

田中加代氏(大阪府障害者福祉事業団ワークさつき 事業所長)

 

さまざまな障害をもつ人を対象に就労支援や健康管理、入浴支援などを行う事業所の管理者の立場から、障害福祉サービス事業所でのCOVID-19対応について報告した。特にグループホームで陽性者が出た際、医師とのやり取りや病院との連携において、看護師の存在が「大変心強かった」と話し、福祉施設での看護師は医療と福祉の間をつなぎ、サービスの一翼として重要な役割を担うことを強調した。

 

 

五感を使えない現場での看護の在り方 袋井麻未氏(宿泊療養対応ナース)

 

宿泊療養施設では電話対応が主になるため、「目で見る」「触れて感じる」といった“五感”を使った看護ができず、電話で確認する「耳で聞く」看護が中心となる。そのため、療養者の声色や話し方、会話の“間”を感じ取り、特に「大丈夫」と言う言葉に隠された意味をくみ取ることが重要となる。

 

「第5波」では電話でも最低限の健康観察しかできず、「本来の看護師としての看護ができず、もどかしさや無力さを感じることがあった」という。このとき支えとなったのは、共に働く看護師やホテルのスタッフ、自治体や大阪府看護協会の支援だった。袋井氏は「また頑張ろうと思える仲間がいることが支えとなる」と述べ、COVID-19対応では、すべての職種が連携して療養者に安心・安楽な環境を提供する「チーム医療」が大切になると強調した。

 


コロナ禍の体験から学ぶ、今伝えたいこと 吉澤恵美子氏(ワクチン接種対応看護師)

 

吉澤氏は、2020年4月に大阪府で緊急事態宣言が発令された当時について「自分が看護師であることも忘れていて、子育て中の主婦であり、約71万人とされる潜在看護師の一人にすぎなかった」と振り返った。しかし連日、感染拡大に伴う医療現場への甚大な影響を見聞きするにつれ、しだいに「このまま何もなくてもいいのか。看護師として自分にできることはないのか」と自問自答するようになったという。

 

そうした中で潜在看護師を対象とした勉強会に参加し、自分のライフスタイルにあった就業が可能と知ってワクチン接種業務に従事することを決めた。当初は感染拡大を食い止めたい、医療現場で奮闘する人々の負担を減らしたいという思いだったが、業務を続けるにつれ「今後も看護師として働きたい」という気持ちも強くなっていった。同僚から現在の病院や訪問看護の状況を聞いたり、看護協会や医療機関が行う復職支援の情報を得たことで、復職への不安は少しずつ消えていったという。

 

吉澤氏は「ワクチン接種業務に就くことで、再び看護師として社会に出ていくチャンスを与えてもらった。このチャンスを生かし看護師として新しい一歩を踏み出していきたい」と今後の抱負を語った。

 

***

 

座長の高橋弘大阪府看護協会会長は、登壇者の発表について「看護師一人ひとりが自立している、自ら考えて行動できる能力をもった職種であることを改めて実感した。危機的な状況でそれぞれの場所で力を発揮された」とその実践を称えた。そのうえで、視聴者に対し「COVID-19の感染拡大が始まってから、さまざまなエピソードをお持ちだと思う。ぜひ語っていただき、文章にしていただきたい。それが知識や学び、財産になる」と呼びかけた。

(2022.2.20)

イベントレポート ①

「この本は、国民全員が読むべき!」(「ナースを激励する会」)

発売から半月余りが経ったころ、『新型コロナウイルナースたちの現場レポート』の執筆者のお一人、山田眞佐美さん(file#095)からご連絡をいただきました。

 

山田さんがFacebookで本書の紹介をされたところ、それを見た歯科医師・長縄拓哉先生が早速本書を読んでくださり、大変感動されて、本書を使って、ご自身が統括されている口腔ケアのメディカルオンラインチーム(BOC : Basic Oral Care)の看護師メンバーを「激励する会」を開催したいとのご提案をいただいたということでした。

 

具体的には、平日の夜に1時間程度、Zoomを使ったオンラインカンファレンスを開催予定で、BOCのメンバーに参加を呼び掛けるとのこと。

 

本のPRとしても大変ありがたいお話で、弊社も微力ながらご協力させていただきました。

 

3月17日(水)20時、ナースを「激励する会」がスタート。

 

パネリスト(敬称略) ◎ 長縄拓哉(本日の会の主催者。歯科医師。BOCプロバイダー講座統括) ◎ 山田眞佐美(大阪国際がんセンター 看護師長) ◎ 石橋美樹(大阪国際がんセンター 歯科部長) ◎ 塚本知恵子(伊丹恒生脳神経外科病院地域医療連携室 室長、日本地域統合人材育成機構 部長

 

 

冒頭、長縄先生がこの会を企画されたきっかけをお話しされました。

 

 

 本を改めて最初からゆっくり読ませていただき、この本は医療者だけでなく、絶対に広く、国民全員が読むべきだと感じています。 大変な思いをしているナースに感謝を伝えたい、勇気づけたい、なんとか激励したい、と思いました。 皆さん、今日は看護師さんをどんどん褒めてくださ~い!

 

次に、山田さんがコロナ禍でのご自身の施設(大阪国際がんセンター)の状況や、管理職としての現場スタッフへの想い、全国の看護管理者へお願いしたいことなど、熱い想いを語られました。

 

 

 

 表紙を見るだけで、涙がでます。 看護の価値を何よりわかっているのは、看護管理者であると思います。今こそ声を大にし、スタッフの気持ちを代弁して、社会に訴えるべきではないかと感じています。 看護職が心を1つにして、未曾有の経験に立ち向かうときではないでしょうか。まずは心がつながることが必要なのだと思います。

 

その後、山田さんの施設の歯科部長・石橋美樹先生から、普段からナースと協働していて感じていることや、コロナ禍で懸命に働くナースへの感謝の言葉がありました。

 

弊社からも簡単な書籍紹介とちょっとした作成秘話をお話しさせていただき、いよいよ本日のメインイベント(⁉)、本の朗読会に突入。

 

山田さんの看護学校時代の同級生である塚本知恵子さんが、本書掲載の山田さんの原稿を情感たっぷりに朗読されました。

 

最後に、参加者からのコメントに応えつつ、山田さんから管理職・中間職・若手ナースそれぞれへのメッセージを伝え、全員で記念写真を撮って会はお開きとなりました。

 

 

 

 本日はありがとうございました。素晴らしい機会をいただき感謝申し上げます。泣けましたー。。。。。(会終了後にいただいた山田さんからのメール)

 

お忙しい中、企画してくださった長縄先生、山田さん、出演してくださった石橋先生、塚本さん、そして平日の夜に参加してくださいました皆様に感謝いたします。

 

あっという間の1時間でした。朗読コーナーがあるとはビックリ……それにしてもナレーションうますぎです(ナレーションのお仕事もされているとのこと)。

 

この本が、もっともっと多くの方に読んでいただけるように、宣伝がんばります。

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