用語2:力能

 

「私はできる」という能力のことです。個々の身体の「できる」という潜在的な力と言い換えることもできます。

 

力能は、個々の身体によって異なります。例えば、Aさんが「できる」こととBさんが「できる」ことは異なるからです。従って、それぞれの力能は各個人を「このもの」にしている本性――つまり、「この私」をまさしく「この私」にしているような、「この私」だけの本性――であるということができるでしょう。

 

もちろん、こうした本性は、すべての人間に共通する人間本性のような普遍的な本性ではありません。存在するのは人間本性ではなく、個々の特異な本性だけなのです。

 

ところで、メルロ=ポンティに則して考えるならば、以上の力能を単純に潜在的な力とだけ規定することはできないでしょう。メルロ=ポンティはこうした力能を、行動し運動する身体の志向性と関係づけて考えているからです。個々の身体の「できる」、すなわち力能=本性は――スピノザが考えるように――私たちに単純に内在しているのではなく、外部との関係によって――円環的に――作動しているのです。