用語2:思考の系譜学

 

ここでの場合は、思考の発生の現場に立ち返り、その発生に付き従うような仕方で、思考を明らかにする思考そのものの営為ということができるでしょう。

しかし、こうした系譜学は、時間的な遡行を意味しているわけではありません。一般的に系譜学というと「家族の家系を明らかにし、家系図を作成する学問」とされるように、歴史的・時間的な遡行を意味しますが、ここでの系譜学は現在と同時的な原因に遡行することを意味します。

 

例えば、メルロ=ポンティという哲学者は「前客観的」や「前論理的」という言葉を用いて、この「前」に立ち返り、客観性や論理の誕生を記述していますが、まさしくこうした彼の哲学は系譜学であると言えるでしょう。それは、まさに生まれつつある客観性や論理に立ち会うということなのです。