「Nursing Today」2013年8月号

[Web版]対談・臨床の「知」を発見しよう! vol.3

編集担当者が発信する、本と雑誌の関連コンテンツ

「正解」はいつも仕組みのほうに?

 

吉田:透析看護という分野は、かつての黎明期には患者さんたちと一緒にさまざまな工夫をされてきたと伺いましたが、今よりも看護師との関係が対等なものだったのでしょうか。

 

水附:以前に比べて今が「対等でなくなった」というよりも、患者さんの権利意識が強くなりすぎていることが、互いの関係を難しくしていますよね。これはね、歳をとった自分が昔を懐かしがっているのではないですよ。そういうのとは違うんです。なんて言うか、人ってお互い迷惑をかけ合って生きているんだけど、その根本にあるのは何なのかということですね。人は一人じゃ生きていけないのですから。

 

吉田:背景にあるのは、患者さん側だけの問題ではなくて、政策が医療を「施し」にしてしまったことに問題があるような気がします。医療のサポートを受けながら、元気に社会で生きていくことを支えるための政策が、疎かになっているのではないでしょうか。そうして医療が「弱い人」を囲い込むという構図ができてしまったために、両者が一緒になって苦労しなければ開拓できない部分が空白になってしまった。それは教育の仕組みにも言えることです。ガイドラインがたくさんセットになっていて、人のやり方をコピーしておけば、とりあえずうまく行きますよと。大事なのは今目の前にいる人と一緒に悩むことで、個人と個人が思っていることをぶつけ合わないといけないのに、あたかも、「正解」はいつも、政策とかガイドラインのような外枠の仕組みのほうにあるといった、錯覚に陥ってしまいます。

 

水附:そう。患者さんも医療者も、お互いが思っている本音を言えなくなってきているでしょう。会話の中の本質的なことよりも、しゃべった言葉自体がどうだとか態度がどうだとか、そういったことでの評価がものすごく重視されてきていますよね。でも、透析患者さんは「透析を始めた時が自分の命日だ」なんて言う人がいるくらい、そこからは器械がないと生きていけないという人生を歩まなくてはいけない。看護師はそこをずっと一緒に歩いていくわけです。だから一番いい看護師というのは、喋り方だとか考え方だとかは二の次で、ずっとそばに居てくれる人なんです。それに針刺しが上手かったらなおいいよねって(笑)。それが、患者さんたちの命をつなぐものなのです。例えば病院を移る時に必要なのは、自身のデータよりも、自分のことを知っていてくれる看護師が、そのつながりをつないでくれているという安心感なんですよね。看護師は、親子きょうだいより長く付き合うこともあり、自分の歴史を深く知っている、そういう相手なんです。

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