JBI ── Evidence Summary

〈精神看護〉

在宅高齢者の転倒・転落予防のための認知行動療法における最良のエビデンスは?

 

Falls (Older People) Prevention - Cognitive Behavioral Therapy

Yimei Li, MBBS, MMed, MPH

15 May 2018

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.269

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

転倒転落は高齢者ケアにおける主要な健康問題であり、転倒転落に関連する負傷は、公衆衛生の主要な懸念事項である。転倒転落の恐怖は高齢者にとって一般的である:地域で暮らす高齢者の約50%が転倒転落への恐怖があると報告しており、およそ40%が転倒転落の恐怖のため活動を避けている。1これらの恐怖の結果として活動を避けている人は、機能の低下、自信の喪失、社会参画の制限、転倒転落、自立の喪失につながる可能性がある。

 

  • 70歳以上の高齢者を対象に、転倒転落への恐怖や活動の回避に対する多構成認知行動的介入の有効性に関するランダム化比較試験(RCT)が行われた。多構成認知行動介入は、転倒転落の恐怖と活動への回避に対して肯定的かつ持続的な効果があった。1(Level1)
  • 転倒転落の恐怖に対し、2か月、8か月、14か月のフォローアップ時期において対照群と介入群の間で有意に差があった。活動の回避において、同様の結果が2か月、8か月時点ではみられたが、14ヶ月時点ではみられなかった。
  • 時間経過とともに、転倒転落者および再転倒転落者の数は、介入群に比べ対照群で大きく増加した。14か月時点で、対照群に比べ介入群で転倒転落者の再発生が有意に少なかった。
  • 多構成認知行動療法群は、各回2時間8週間のセッションを受け、8セッションから6か月後にブースターセッションを受けた。このセッションには、4つの戦略が用いられており、それらには、転倒転落のリスクと恐怖の見方を強める誤解をコントロール可能なものとして再構築すること、安全な方法で活動を増やすための現実的な目標を設定すること、転倒転落のリスクを減らす家の環境を変えること、筋力とバランスを改善するための身体的運動を行うことが含まれていた。また、これらのセッションには講義、ビデオ、グループディスカッション、問題解決とアサーティブトレーニングが用いられていた。この介入は訓練された看護師が実施した。対照群は通常のケアを受けた。
  • 地域で暮らす70歳以上のフレイルの高齢者を対象としたRCTは、転倒転落、障害による活動の回避や転倒転落に対する家庭ベースの認知行動療法プログラム(HBCBP)の有効性を検討した。プログラムは、対照群と比較し、転倒転落を有意に減少させ、活動の回避、障害、屋内での転倒転落回数に関連するアウトカムで肯定的な結果を示した。しかし、総転倒転落回数において両群間で有意差はみられなかった。2(Level1)
  • 以下の戦略が介入群(HBCBP)に適用された:転倒転落とそのリスクに関する誤解の特定と再構築;活動レベルと安全行動の工場のための現実的な個人目標の設定;転倒転落の恐怖のため避けられている昔からの習慣的活動や新たな活動の取り込みの促進。プログラムは3回の家庭訪問(2回は60分のセッション、1回は75分のセッション)と4回の電話セッション(各35分)の7セッションで構成されていた。参加者はまた、情報の記載されたリーフレットを読んだり、転倒転落についての自分自身の考え方を知るためのチェックリストを完成させたり、個別の行動計画を実行するというようなホームワークを行う必要があった。加えて、転倒転落についてピアの人がどのように対処しているかを示しているDVDが参加者に提供された。訓練されたコミュニティナースがこの介入を進行した。対照群は通常のケアを受けた。
  • NICE(英国国立医療技術評価機構)のガイドラインは、高齢者(65歳以上)の1度目の転倒転落後の再発の防止と評価を更新した。ここでは、転倒転落リスクが増している高齢者に対して個別化した多因子介入の利用を推奨している。ここではまだ、高齢者の転倒転落発生を減らすために認知行動的介入の単独での使用を推奨していない。この介入は転倒転落予防プログラムの一部であるべきであり、これは自己効力感の低さや転倒転落への恐怖の様な潜在的バリアに対処し、参加者と交渉して活動の変化を促すのに役立つ。3(Level5)

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである:

 

  • 540名の参加者を含むRCT。1
  • 389名を含むRCT。2
  • NICE臨床ガイドライン。3

 

◉ References

 

  1. Zijlstra GA, van Haastregt J, Ambergen T, van Rossum E, van Eijk J, Tennstedt S, et al. Effects of multicomponent cognitive behavioural group intervention on fear of falling and activity avoidance in community-dwelling older adults: results of a randomized controlled trial. J Am Geriatr Soc. 2009; 57: 2020-2028.
  2. Dorresteijn T, Zijlstra GA, Ambergen A, Delbaere K, Vlaeyen J, Kempen G. Effectiveness of a

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards.

How to cite: Yimei Li, MBBS, MMed, MPH. Evidence Summary. Falls (Older People) Prevention - Cognitive Behavioral Therapy. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2018; JBI15200. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2018 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細