JBI ── Evidence Summary

〈手術室看護〉

大手術を受ける患者の加温方法に関する最良のエビデンスは?

 

Patient Warming Systems: Effects of Patient Warming Methods

(active vs passive) in patients undergoing major surgery

Dr Aye Aye Gyi. MBBS.MMedSc.MPhil,PhD

1 April 2018

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.189

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

外科手術を受けることに関連した深部体温が36℃未満と定義される不慮の低体温症は一般的であり、報告されている有病率は50%から70%の範囲である。1 周術期環境における低体温症は、術後感染症や出血のリスク増加といった術後死亡率に関連する多くの望ましくない生理学的影響をもたらす場合がある。2 周術期環境における低体温症を予防または治療するためにはさまざまな選択肢があり、それらには能動的および受動的加温方法が含まれる。1-2  受動的加温方法とは、患者の体熱を熱エネルギーの源として利用して保温する(綿毛布、靴下、ヘッドカバーなど)方法が含まれ、手術準備段階から皮膚表面の露出範囲を制限することである。1-2 能動的加温方法とは、皮膚や深部に対して外部から表面的に患者に熱を加える方法である。1-3  例として、強制温風式加温システムや、静脈内輸液ウォーマー、循環式ウォーターマットレス、および皮膚に直接熱を加える空気を含まない伝導性加温システムといったような伝導性加温装置が含まれる。1-4

 

  • システマティックレビューでは、周術期環境における低体温症の治療および/または予防のさまざまな選択肢について検討された。レビューでは、強制温風式加温または、強制温風式加温と能動的加温装置を使用した静脈内輸液の加温を併用することが、手術創感染および術後心臓合併症のリスクを減少させるのに有効であることが明らかとなった。これらの結果を裏付けるには、さらなる研究が必要である。1 (Level 1)
  • システマティックレビューでは、全身麻酔下であらゆる種類の選択的大手術を受ける患者の手術直前および/または手術中に能動的な身体加温介入を実施した際の効果について評価した。いくつかの異なる種類の能動的体表面加温システム(主に強制温風式加温装置で構成される)を、循環式ウォーターブランケット、加湿空気、スペースブランケットや不特定の方法といった受動的加温方法を受けた対象群と比較した。レビューの結果は、強制温風式加温装置を使用して周術期の正常体温を維持する能動的加温方法を受けた患者は、対照となる治療(受動的加温方法)を受けた患者と比較して、術後手術部位感染のリスクが有意に低いことを示した。これらの患者においては、対照介入群と比較して熱的快適性が向上した。一方で、死のリスク、失血、または輸血の必要性については、加温することでの違いはほとんど、またはまったくみられなかった。対照群の患者と比較して、致命的ではない心臓発作の発生数、不安、または痛み(有効な尺度で評価)について違いはみられなかった。これらの結果を裏付けるには、さらなる研究が必要である。2 (Level 1)
  • システマティックレビューでは、整形外科手術における強制温風式加温の使用に関連する感染の発生率について、導電性織物による加温による場合と比較して調査された。このレビューでは、強制温風式加温装置の使用後に感染症を発症する重大なリスクは見つからなかった。3 (Level 1)
  • システマティックレビューと矛盾せず、ガイドラインには、主要な外科手術中に強制温風式加温装置を使用した周手術期の正常体温維持に関する推奨事項が含まれている。強制温風式加温装置が適さない場合は、抵抗加熱マットレスまたは抵抗加熱ブランケットを使用することができる。4 (Level 5)
  • ガイドラインでは、体温加温装置を使用する場合、医療従事者はその使用法についてトレーニングを受け、製造業者および供給業者の指示に従ってそれらを管理し、その施設の感染予防指針を遵守する必要があると示している。4 (Level 5)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 合計1,451人の患者を対象とした19件の無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー。そのうち16件のRCTは、全身麻酔下で異なる選択的外科手術(主に整形外科手術)を受けた1334人の患者を対象とした。1
  • 全身麻酔下であらゆる種類の予定された手術(一般的な腹部、整形外科、心臓手術)を受けた5,438人の患者を対象とした67件の無作為化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー。2
  • 1,965人の整形外科患者を対象とした37件のRCTのシステマティックレビュー。3
  • 臨床ガイドライン。4

 

 

◉ References

 

  1. Moola S, Lockwood C. Effectiveness of strategies for the management and/or prevention of hypothermia within the adult perioperative environment. Int J Evid Based Healthc. 2011;9(4):337-45.
  2. Madrid E, Urrutia G, Roque i Figuls M, Pardo-Hernandez H, Campos JM, Paniagua P, et al. Active body surface warming systems for preventing complications caused by inadvertent perioperative hypothermia in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2016;4:CD009016.
  3. Haeberle HS, Navarro SM, Samuel LT, Khlopas A, Sultan AA, Sodhi N, et al. No Evidence of Increased Infection Risk with Forced-Air Warming Devices: A Systematic Review. Surg Technol Int.2017;31:295-301.
  4. The National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Hypothermia: prevention and management in adults having surgery Clinical guideline [CG65] Published date: April 2008 Last updated: December 2016 2016.

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Dr Aye Aye Gyi. MBBS.MMedSc.MPhil,PhD. Evidence Summary. Patient Warming Systems: Effects of Patient Warming Methods (active vs passive) in patients undergoing major surgery. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2018; JBI801. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2018 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細