JBI ── Evidence Summary

〈手術室看護〉

最も効果的な無菌操作は?

 

Asepsis: Clinician Information

Micah D J Peters BHSc MA(Q) PhD

29 March 2017

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.202

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

無菌操作は、感染症を引き起こす可能性のある微生物による、傷および他の感染しやすい身体部位の汚染を防ぐためにとられる手順である。1文献検索により、さまざまな病院、さらにはある一病院で使用されているさまざまな実践が明らかになった。2無菌操作に関する様々な違いは、結果と手順に関する報告された違いを説明しているかもしれないため、研究間での比較が課題である。

 

  • 臨床診療ガイドラインでは、イギリス全土で採用されている無菌的非接触操作(ANTT)が推奨されている。これは、すべての無菌作業に適用できる標準化された無菌操作の例である。1 (Level 4)
  • 専門家の意見としては、標準化でき、改善のために毎年監査できるような無菌操作に関する一つの統一された取り組みが必要であることを示唆している。2 (Level 4)
  • 文献レビューの著者によると、感染リスクの低減には手指衛生が重要であると報告されている。3 (Level 4)
  • イギリスの臨床診療ガイドラインでは、液体石鹸の代わりに固形石鹸を使用する場合には、排水可能な石鹸ラックを用いて小さな石鹸を使用することを推奨している。エモリエント(皮膚軟化剤入り)ハンドクリームは、定期的な手指衛生による乾燥から皮膚を保護し、刺激性接触皮膚炎の発生を減らす。石油系ローションは、ラテックス素材の劣化を引き起こす可能性があり、これは手袋の有効性を低下させる可能性につながる。手指衛生を開始する前には、汚れや有機物の手への付着を避け、アルコール系手指消毒液を塗布した後、消毒液が蒸発するまでしっかりと擦る必要がある。4 (Level 4)
  • イギリスとアメリカの臨床診療ガイドラインでは、手袋は使い捨てとし、侵襲的処置、滅菌部位および非損傷の皮膚または粘膜との接触、および血液、体液、分泌物や排泄物、または鋭利な器具や汚染された器具への曝露のリスクを伴うと評価されたすべての活動際に着用しなければならないということが推奨されている。4-6 (Level 4)
  • イギリスおよびアメリカの臨床診療ガイドラインでは、汗を除く血液、体液、分泌物または排泄物に衣服がさらされる恐れがある場合には、使い捨てのプラスチック製エプロンまたは撥水性のガウンを着用することを推奨している。これらの液体が顔や目に飛び散る恐れがある場合は、フェイスマスクと目の保護具を着用する必要がある。4-6 (Level 4)
  • アメリカの臨床診療ガイドラインでは、空の石鹸ディスペンサーに液体石鹸を追加しないことを推奨しいる。なぜなら、この「トップオフ」を行うことで石鹸の細菌汚染につながる可能性があるためである。5 (Level 4)
  • 少量(つまり、0.2〜0.5 mL)のアルコールを手に塗布することは、普通の石鹸と水で手を洗うよりも効果的ではない。5 (Level 4)
  • アルコール系消毒液がすべての手の表面に行き届くこと、そして指の先端、親指、および指の間に特に注意を払いながら、最低10〜15秒間手を強くこすり合わせる必要がある。5,6 (Level 4)
  • クロルヘキシジンやポビドンヨードなどの抗菌石鹸は日常的に使用する必要はないが、侵襲的処置を行う前には使用が推奨される。6 (Level 4)
  • 文献レビューの著者は、聴診器のベル面と膜面、ならびに消毒剤を使用した耳鏡または検眼鏡の取っ手と本体を定期的に拭くことで、感染の拡大を防ぐことができると示唆している。耳用掻爬器(キュレット)は、使用するたびに清掃する必要がある。血圧計のカフは、損傷した、または傷のない皮膚に直接接触するべきではない。漂白剤の接触時間は少なくとも30秒とし、クリーニング中は手袋を着用する必要がある。6 (Level 4)
  • 患者毎に交換される使い捨ての紙またはリネンで検査台を覆うことは、微生物の伝播のリスクを減少させる。環境表面は洗剤で洗浄し、新しく調製した漂白剤溶液(1:64に希釈)で消毒する必要がある。6 (Level 4)
  • 手指衛生の選択肢の一つとして、病院でのアルコール系溶剤使用を支持する臨床的エビデンスを評価するために、システマティックレビューが行われた。著者は、石鹸または他の消毒薬と水で手洗いをするよりも、アルコール系擦式消毒の方が微生物を効果的に除去し、より短い時間で行え、手への刺激も少ないと報告した。微生物除去に関して、アルコール系のハンドジェル/溶剤は非薬用石鹸または他の消毒薬と水を使用した従来の手洗いよりも効果的である。7 (Level 1)
  • コクランのシステマティックレビューでは、手指衛生順守を改善する戦略の短期的および長期的な効果、および手指衛生順守の持続的改善が医療関連感染率を低下させるかどうかについて評価された。著者らは、どの戦略が手指衛生順守を改善するかを確実にするためのエビデンスは十分でないと報告した。教育/トレーニングを伴うアルコール系手指擦式消毒剤導入は十分ではないが、活動の計画やソーシャルマーケティング戦略の適用にスタッフを関与させるなど、複数の戦略を使用すると効果がある場合があると考えられる。8 (Level 1)
  • コクランのシステマティックレビューは、60歳以上の長期療養施設(LTCIs)入居者を対象に、検査で証明されたインフルエンザ、肺炎、肺炎による死亡、呼吸器疾患による入院の発生率に対する医療従事者の予防接種の影響について評価するために実施された。著者らは、長期療養施設で高齢者のケアを行う医療従事者への予防接種は、特定の結果に影響を及ぼさないと報告した。手洗い、マスク、鼻腔スワブ、抗ウイルス薬、隔離、訪問者の制限、インフルエンザ様症状のある医療従事者への出勤禁止などのその他の介入により、60歳以上の長期療養施設入居者の安全が確保される可能性があると考えられる。9 (Level 1)
  • コクランのシステマティックレビューは、一時癒合により治癒した手術創傷を有する人々の手術部位感染予防のための創傷被覆材の効果を評価するために実施された。著者は、創傷被覆材で一時癒合により治癒した手術創傷を覆うことでSSIのリスクを減少させること、また特定の創傷被覆材がSSIの割合減少、瘢痕化、疼痛管理、患者の受容性、または被覆材除去の簡便さを改善する上で他より効果的であることを示唆する証拠はないと報告した。10 (Level 1)
  • 質的インタビューと観察研究は、無菌操作の実施における地域看護師の実践を調査するために実施された。著者らは、無菌操作についてはある程度の認識はあるものの、創傷ケアに関するガイドラインの理解不足、正しいサイズの手袋や保護エプロンなどの機器の供給不足、家庭環境内における不十分な衛生状況、滅菌包帯パック標準化の欠如といった、いくつかの障壁があると報告した。11 (Level 3)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 感染予防指針と臨床診療ガイドライン1
  • 専門家の意見2
  • 58件の研究を要約した文献レビュー3
  • イギリスの臨床診療ガイドライン4
  • オーストラリアの臨床診療ガイドライン5
  • 44件の文献を含む文献レビュー6
  • 37件の研究(20件の無作為化比較試験、または比較臨床試験)を含むシステマティックレビュー7
  • 4件の無作為化比較試験を含むコクランのシステマティックレビュー8
  • 4件のクラスター無作為化比較試験(n=7558)と1件のコホート研究(n=12742)を含むコクランのシステマティックレビュー9
  • 合計2,578人を対象とした16件の無作為化比較試験を含むコクランのシステマティックレビュー10
  • 対象者を含む質的研究11

 

 

◉ References

 

  1. The Infection Control Department. Infection control policies; Section G: Aseptic techniques policy. Calderdale and Huddersfield NHS Foundation Trust. 2008; Issue 3. (Level 4)
  2. Aziz AM. Variations in aseptic technique and implications for infection control. Br J Nurs. 2009; 18(1): 26-31. (Level 4)
  3. Preston RM. Aseptic technique: evidence-based approach for patient safety. Br J Nurs. 2005; 14(10): 540-546. (Level 4)
  4. National Institute for Clinical Excellence. Infection Control. Prevention of healthcare-associated infection in primary and community care. NICE 2003. (CG2) (Level 4)
  5. Centres for Disease Control and Prevention. Guideline for hand hygiene in health-care settings: recommendations of the healthcare infection control practices advisory committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force. (CDC) 2002; 51 (RR16): 1-44 (Level 4)
  6. American Academy of Paediatrics. Infection control in physicians' offices. Paediatrics. 2000; 105(6): 1361-1369. (Level 4)
  7. Picheansathian W. A systematic review on the effectiveness of alcohol-based solutions for hand hygiene. Int J Nurs Pract. 2004 ; 10(1):3-9. (Level 1)
  8. Gould DJ, Moralejo D, Drey N, Chudleigh JH. Interventions to improve hand hygiene compliance in patient care. Cochrane Database Syst Rev. 2010; 9. (Level 1)
  9. Thomas RE, Jefferson T, Lasserson TJ. Influenza vaccination for healthcare workers who work with the elderly. Cochrane Database Syst Rev. 2010; 2. (Level 1)
  10. Dumville JC, Walter CJ, Sharp CA, Page T. Dressings for the prevention of surgical site infection. Cochrane Database Syst Rev. 2011; 7. (Level 1)
  11. Unsworth J, Collins J. Performing an aseptic technique in a community setting: fact or fiction? Prim Health Care Res Dev. 2011; 12(1):42-51. (Level 3)

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Micah D J Peters BHSc MA(Q) PhD. Evidence Summary. Asepsis: Clinician Information. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2017; JBI206. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2017 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細