JBI ── Evidence Summary
〈母性看護〉
親への産前教育に関するエビデンスは何か?
Antenatal Care: Parent Education
Dr Rasika Jayasekara RN, BA, BScN(Hons), PGDipEdu, MNSc, MClinSc, PhD
6 February 2018
『JBI:推奨すべき看護実践』p.276
◉ 臨床上重要な事実
産前ケアは、重要な予防的保健サービスであり、慣例的には妊娠、出産、児の授乳および育児について親を教育するケア提供者(助産師、産科医または一般開業医)が関与する1
産前クラスの目的は、支援的なグループ環境を提供すること。これに、将来の両親が能力に対する自己認識と自信を育み、より積極的に出産を経験し、そして親へ移行するときに感情的にも実践的にも調整できることである。話題には以下が含まれる:児および産後のケア、母乳育児、育児のスキル、分娩のためのスキル、ならびに分娩中および分娩中の意思決定2
- コクランのシステマティックレビューでは、グループでの産前ケアと個別での産前ケアで、母子の心理社会的、生理学的および分娩時の転帰を比較した。標準的な個別ケアと比較して、グループケアを受けた女性では早産に統計的な有意差はなかった1 (レベル1)
- グループでの産前ケアプログラムに参加した女性は、標準的ケアと比較して産前ケアの満足度が高いと報告している1(レベル1)
- 周産期の疾病罹患率を低下させるための産前の心理社会的評価を検討するコクランのシステマティックレビューにおいては、ルーチンの産前の心理社会的評価それ自体が周産期の精神的健康の改善につながるという証拠は不十分であり、さらなる研究が推奨される2
- リスクを同時に識別することによる評価介入(例:妊娠中のリスクのある女性と症状のある女性の両方を識別するための産前心理社会的健康評価[Antenatal Psychosocial Health Assessment; ALPHA])と症状プロファイル(例えば、エジンバラ産後うつ病自己評価票[Edinburgh Depression Scale; EDS])は、家庭内暴力の識別と可能性の高い産後うつ病の予測に価値がある2 (レベル1)
- コクランのシステマティックレビューでは、産前の母乳育児教育が母乳育児の開始と期間に与える影響を調査している。 このレビューでは、母乳育児の開始、母乳育児をしている女性の割合、3ヶ月または6ヶ月の完全母乳育児、または母乳育児の期間を改善するための産前の母乳育児教育を支持するエビデンスは得られなかった3(レベル1)
- 家族研究者のグループは、家族全員に影響を及ぼす親への移行の準備ができていないままであるため、父親が産前教育に参加することを推奨しています。4(レベル5)
- 提言には以下が含まれる:
・父親が経験するであろう関係や役割の変化、そして健全な育児パートナーシップを築き維持する方法を準備すること。
- 以下を目的とする:
・精神的苦痛やうつ病を発症するリスクの増加、および援助や支援を求めることの重要性に対する親の意識を高めること。
・効果的な支援の仕方と児のコミュニケーションを理解する方法を教えることによって、父親のパートナーをよりよく支援する能力を向上させること。
・父親と児の間の早期かつ強力な愛着の発達を促進すること。
・親にチームワークの重要性を伝えることによって、強力な子育て同盟への発展を促進すること。4(レベル5)
- オーストラリアで2つの産前教育プログラムを調査したランダム化比較試験において、「Having a Baby(赤ちゃんをもつこと)」プログラムに参加した女性の自己効力感スコアは、通常のプログラムに参加した女性よりも有意に高いことがわかった。これは子育ての問題、成人の学習原則の使用、および分娩、出産、児のケア、育児に関連する問題解決およびスキルベースのアクティビティの包含に重点が置かれている。 この目的は、問題解決能力に対する参加者の信頼や自信を高めることであった。 どちらのプログラムも同じ長さであった(産前に7時間×2時間のセッション、産後約6週間の追加ミーティング)。 両方のグループに登録されているカップルの最大数は11だった。「Having a Baby」プログラムに参加した女性の育児知識はより高く、心配のスコアはより低かった(しかし有意ではなかった)5(レベル1)
- 「Having a Baby」プログラムでは、妊娠、分娩、および早期の育児経験を、出産全体の経験のほんの一部として強調している。分割のトピックではなく、統合された育児アクティビディである。それは新しい親に一回のセッションで早期育児経験の概要を提供する。新生児の特徴や行動を観察するために生後1日の児の沐浴を含んでいる。 さらに問題解決、学習への積極的なアプローチを含む。実験的介入には、家に帰るアクティビィティも含まれていた5(レベル1)
- 分娩誘発、自然経腟分娩、鉗子分娩、分娩時間の長さ、分娩時の外傷、出産後の満足感、分娩中の統制感(コントロール感)、分娩中の疼痛緩和を使用した女性の割合にグループ間差はみられなかった 5(レベル1)
- 無作為化比較試験研究では、産前教育介入(「Towards Parenthood (親となること)」)は、ルーチンケアと比較して、産後の軽度から重度のうつ病/不安症状が有意に減少することがわかった。 「Towards Parenthood」プログラムは9つのユニットからなる自助ワークブックで構成されている- 妊娠中の読み物8つと産後の読み物が1つであった。 女性は、毎週の電話サポートセッションで心理学者または研修生の心理学者と内容を話し合う。ユニット2は特にパートナーのために書かれている。 女性はユニット1を読み、次にユニット3を読む。 電話は約30分間である。ルーチンケアでは、助産師やGP(注:正式名称の記載はないが、General Practitioner; 総合診療医の略称と思われる)による症例管理が含まれていた6(レベル1)。
- コクランのシステマティックレビューでは、出産のための産前教育の利点と使用する最善の教育アプローチが不明確であることがわかった。 帝王切開後の経腟分娩率を増加させることを目的とした個別化された産前教育および社会的支援プログラムは、出産および/または親になるための個別または集団の産前教育において、カップルの知識を有意に増加させた7 (レベル1a)。
- 深呼吸やリラクゼーション(精神的予防法)のトレーニングは、分娩時の硬膜外鎮痛薬の使用量を減少させたり、出産未経験の親の初期の親であること(early parenthood)のストレスの改善効果は示されなかった7(レベル1)。
- 分娩、特に正常分娩に対する産前教育の効果を判断するためのシステマティックレビューでは、産前教育に参加する女性には、仮性陣痛での入院が少なく、パートナーの関与が多く、不安が減少するがより多くの分娩時介入を必要とする(例:分娩誘発、硬膜外使用 ※訳注:麻酔や鎮痛の意と思われる)ことがわかった。 4つの研究が、真の陣痛の認識についての特別な教育をした際に仮性陣痛での入院が有意に減少したことを示した8(レベル1)。
- コクランのシステマティックレビューでは、妊娠中の女性とその家族に分娩の診断についての情報を提供することが分娩と出産に関する決定に影響を与えるというエビデンスは現在のところ不十分であると結論づけている9(レベル1)
- システマティックレビューでは、母乳育児に関する産前教育は、ルーチンケアと比較して(母乳育児の)開始率を有意に増加させることがわかった。 セッションの長さと、個別化されたセッションとグループ内でのセッション間に違いはなかった10(レベル1)
- 他施設共同無作為化比較試験では、精神予防を伴う産前準備に焦点を当てた構造化された産前教育のマニュアルを元にしたモデルが、標準的な産前教育よりも予想される親の期待をより満たす可能性があることを示した11(レベル1)
- 心理的治療モデルに基づく産前クラスでは、教育的介入よりも成功している。 認知行動療法に基づく女性への介入は、産前うつ病の治療に有効であることが示された。 成功した介入には対人関係と対立に対処するための主な要素を含んでいる。レビュアー(この論文の著者の意と思われる)は、双方のパートナーが協力することでより多くの利があると提言している12(レベル1)
◉ エビデンスの特性
このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである:
- 4つの無作為化比較試験(RCT)からなる計2350人の女性を含むコクランのシステマティックレビュー1
- 高い質の2つのRCTからなる計600人の女性と、60人の医療提供者を含むコクランのシステマティックレビュー2
- 24件のRCT(10056人の女性)を含むコクランのシステマティックレビュー。20件の研究(9789人の女性)が分析時のデータに寄与した3
- 専門家の意見書4
- 170人の妊婦を含む無作為化比較試験5
- 143人の妊婦を含む無作為化比較試験6
- 異なる方法論の質の9件のRCTからなる合計2284人の女性を含むコクランのシステマティックレビュー7
- 10件の研究(6件のRCT、4件の観察コホート研究)からなるシステマティックレビュー8
- 245人の妊婦を含む1件のRCTからなるコクランのシステマティックレビュー9
- 30件のRCTと異なる方法論の質の非RCTからなるシステマティックレビューとメタ解析10
- 1087人の出産未経験者と1064人のパートナーからなる、精神的予防法以外の標準的な産前教育と、精神的予防法でのトレーニングで自然分娩に焦点をあてた産前教育の効果を比較する他施設共同無作為化比較試験11
- 11件のRCTからなるシステマティックレビュー12
◉ References
- Catling CJ, Medley N, Foureur M, Ryan C, Leap N, Teate A, Homer CSE. Group versus conventional antenatal care for women. Cochrane Database Syst Rev. 2015; 2. (Level 1)
- Austin MP, Priest SR, Sullivan EA. Antental psychosocial assessment for reducing perinatal mental health morbidity. Cochrane Database Syst Rev. 2008;4. (Level 1)
- Lumbiganon P, Martis R, Laopaiboon M, Festin MR, Ho JJ, Hakimi M. Antenatal breastfeeding
- May C, Fletcher R. Preparing fathers for the transition to parenthood: Recommendations for the content of antenatal education. Midwifery. 2013:29:474-478. (Level 5)
- Svensson J, Barclay L, Cooke M. Randomised-controlled trial of two antental education programmes. Midwifery. 2009;25:114-125. (Level 1)
- Milgrom J, Schembri C, Ericksen J, Ross J, Gemmill AW. Towards parenthood: An antenatal
- Gagnon AJ, Sandall J. Individual or group antenatal education for childbirth or parenthood, or both. Cochrane Database Syst Rev. 2007;3. (Level 1)
- Ferguson S, Davis D, Browne J. Does antenatal education affect labour and birth? A structured review of the literature. Women and Birth. 2013;26:e5-e8. (Level 1)
- Lauzon L, Hodnett E. Antenatal education for self-diagnosis of the onset of active labour at term. Cochrane Database Syst Rev. 1998;4. (Level 1)
- Guise J, Palda V, Westhoff C, Chan BKS, Helfand M, Lieu TA. The effectiveness of primary
- Bergstrom M, Kieler H, Waldenstrom U. Effects of natural childbirth preparation versus standard antenatal education on epidural rates, experience of childbirth and parental stress in mothers and fathers: a randomised controlled multicentre trial. BJOG. 2009;116(9):1167-76. (Level 1)
- Clatworthy J. The effectiveness of antenatal interventions to prevent postnatal depression in high-risk women. J Affect Disord. 2012;137:25-34. (Level 1) 6
The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards.
How to cite: Dr Rasika Jayasekara RN, BA, BScN(Hons), PGDipEdu, MNSc, MClinSc, PhD. Evidence Summary. Antenatal Care: Parent Education. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2018; JBI569. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2018 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.
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