JBI ── Evidence Summary

〈がん看護〉

植込み型静脈ポー(IVPのアクセスとロックに関する最良のエビデンスは?

 

Implantable Venous Port (IVP): Accessing and Locking

Micah D J Peters BHSc MA(Q) PhD

18 December 2015

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.138

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

植込み型静脈ポート(IVP)は輸液、薬剤、非経口栄養剤、血液製剤を長期間投与できる中心静脈デバイス(CVAD)である。1植込み型静脈ポートは長期間の治療やがんや嚢胞性線維形成などの慢性疾患に用いられることが多い。2,3植込み型静脈ポートの外部部品はなく、皮下の皮下ポケットの中に入れられる。1植込み型静脈ポートは、注射針や、異なる薬剤や輸液を別々に投与するために、シングルもしくは複数のルーメンを接続することが可能である。1

 

〈アクセス〉

  • エビデンスに基づくガイドラインは、特別に訓練された臨床医だけがIVPに接続もしくは除去を行うべきだと推奨している。1 (Level 5)
  • 専門家の意見では、ポートの後部壁に対してニードルを感知すること少量の血液の吸引は、ニードルが正しく挿入されていることを確認する際に用いられることが推奨されている。4 (Level 5)
  • 専門家の意見では、IVPは、ひっくり返る/転化する可能性があり、到達できなくなる可能性があると述べられている。これは、血液の吸引が不可能であるときに、認められる可能性がある。5 (Level 5)

 

〈消毒〉

  • 臨床医は、IVPに接続する前後に、消毒剤を用いた衛生学的手指消毒を行うべきである。1 (Level 3)
  • IVPをもつ患者のカテーテルやポケットに関連した感染は、スタンダードプリコーションと手指衛生の遵守によって減少させることが可能である。5 (Level 5)
  • 接続前に植込みポートの部位をアルコール含有の0.5%以上のクロルヘキシジン製剤で消毒する。1 (Level 1)

 

〈ドレッシング〉

  • 挿入部位が治癒し、縫合糸が除去され/溶解されるまで、植込み型静脈ポートに使用された透明ドレッシング材は、汚れたり、緩んだりしない限り、少なくとも週1回交換するべきである。1 (Level 5)
  • 患者が発汗症である場合、ポート部が出血または滲出している場合は、無菌ガーゼのドレッシング材を使用する。ドレッシング材は湿ったり、ゆるんだり、明白に汚れたりした場合は、交換されなければならない。1 (Level5)

 

〈注射針〉

  • 最も小さくて実施可能なノンコアリングニードル(例 フーバー針)は、植込みポートからボーラス注射を行う際に使用され、長期の注入の際には専用のベベルのニードルが使用される。6 (Level 5)
  • 植込みポートに接続する際に使用されるニードルの交換頻度に関する明白なエビデンスはない。1 (Level 5)
  • 長期間の注入の際に使用される植込みポートに接続するニードルの長さに関する明白なエビデンスはない。1 (Level 5)
  • ある研究では、適切な無菌操作で穿刺されたフーバー針は、局所刺激、カテーテル感染または血栓の形成がなく、数週間(平均28日間)は安全に使用できる可能性があることが報告されている。7(Level 4)
  • 90度の角度で針を貼付して、支え、安定させるために、滅菌ガーゼとテープが使用される可能性がある。4 (Level 5)

 

〈疼痛〉

  • 消毒の前に、10分間の小さな冷却パックを使用するか、経皮性麻酔クリームを塗布することは、植込みポートに接続する際に生じる疼痛や不快感を軽減するのに効果的である。4 (Level 5)

 

〈カテーテルのフラッシュ〉

  • フラッシュは、薬液の投与前後と採血の前後で実施されるべきである。8 (Level 5)
  • カテーテルを洗浄するために、拍動性の動きを利用するべきである。2回のボーラス投与の間に0.4秒の間隔を設けて、1mLのボーラス投与を10回で行う。8 (Level 5)

 

〈カテーテルのロック〉

  • シリンジの接続を外す際は、陽性加圧法が用いられるべきである。8 (Level 5)
  • カテーテルをロックする際に投与される薬液量は、カテーテル全体を充填するのに十分な量を使用しなければならない。IVPの場合は、約2.5mLである。8 (Level 5)
  • 開存性を維持するためにIVPをロックする際にヘパリンを使用することについては、十分なエビデンスはない。
  • 多施設RCTでは、IVPのロックのために使用している生理食塩水はヘパリンより劣っているわけではないこと、ヘパリンの使用は論争の的となっており、生理食塩水より効果的であるわけではないことが報告されている。9 (Level 1)
  • エビデンスに基づくガイドラインでは、製造業者は開存性の維持のためにヘパリンを使用することを推奨しているが、システマティックレビューと(主にCVCに焦点を当てた)RCTから導かれたエビデンスは有益性を示す直接的なエビデンスではなかったことが報告されている。10 (Level 1)
  • カテーテルが使用されていないロック中の最適時間に関する検討は不十分である。IVPのロックは6~8週間ごとに実施することが一般的に推奨されている。8 (Level 5)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • エビデンスに基づくガイドライン2件1,10
  • 専門家の意見に基づく論文4件4-6, 8
  • 60名を対象とした横断調査1件7
  • 433名を対象とした14施設の多施設RCT1件9

 

 

◉ References

 

  1. O'Grady NP, Alexander M, Burns LA, et al. Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infections. Am J Infect Control. 2011; 39(4 Suppl 1): S1-34.
  2. Hsu CCT, Kwan GNC,van Driel ML, Rophael JA. Venous cutdown versus the Seldinger technique for placement of totally implantable venous access ports: Intervention protocol. Cochrane Database System Rev, 19 Jan, 2011.(Level 5)
  3. Rahman AK, Spencer D. Totally implantable vascular access devices for cystic fibrosis. Cochrane Database Syst Rev. 2012; 5. (Level 5)
  4. Larouere E. The art of accessing an implanted port. Nursing. 1999; 29(5): 56-8. (Level 5)
  5. Zaghal A, Khalife M, Mukherji D, et al. Update on totally implantable venous access devices. Surg Oncol. 2012; 21(3): 207-15. (Level 5)
  6. Kurul S, Saip P, Aydin T. Totally implantable venous-access ports: local problems and extravasation injury. The Lancet Oncology. 2002; 3(11): 684-92. (Level 5)
  7. Karamanoglu A, Yumuk PF, Gumus M, et al. Port needles: do they need to be removed as frequently in infusional chemotherapy? J Infus Nurs. 2003; 26(4): 239-42. (Level 4)
  8. Goossens G. Flushing and locking of central venous catheters: Available evidence and evidence deficity. Nurs Res Pract 2015; Epub doi: 10.1155/2015/985686. (Level 5)
  9. Dal Molin A, Clerico M, Baccini M, Guerretta L, Sartorello B, Rasero L. Normal saline versus heparin solution to lock totally implanted venous access devices: Results from a multicenter randomized trial. Eur J Oncol Nurs. 2015. (Level 1)
  10. Loveday HP, Wilson JA, Pratt RJ, et al. epic3: National evidence-based guidelines for preventing healthcare-associated infections in NHS hospitals in England. J Hosp Infect. 2014; 86, Supplement 1: S1-S70.

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Micah D J Peters BHSc MA(Q) PhD. Evidence Summary. Implantable Venous Port (IVP): Accessing and Locking. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2015; JBI14176. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2015 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細