JBI ── Evidence Summary

〈がん看護〉

治療中のがん患者における口腔粘膜炎の評価に関する最良のエビデンスは?

 

Oral Mucositis: Assessment

Eric Fong MBBS MPHTM

17 August 2019

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.178

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

口腔粘膜炎は、ほとんどの化学療法、放射線療法、標的治療を含むがん治療の一般的な用量関連副反応である。1 口腔粘膜炎は、口腔内の発赤、腫脹、そして潰瘍として現れ、栄養摂取、口腔機能、生活の質の低下や免疫不全患者の感染リスクの増加につながる可能性がある。1 ハイリスク患者の少なくとも75%が、口腔粘膜炎の影響を受けており、ローリスクの場合では、観察結果が過少に報告される可能性がある。1 口腔粘膜炎は、罹患した患者において治療中断の主要な原因となる可能性がある。1 口腔粘膜炎の予防と治療のための介入があり、これらの介入は患者の状態や学際的評価による慎重なアセスメントに従う必要がある。2

 

  • 根拠に基づく手引きを基盤とするシステマティックレビューでは、口腔粘膜炎の徴候、症状の観察、評価、記録が良好な口腔ケアと粘膜炎の予防と治療に不可欠であることに言及していた。検証され構造化された口腔内評価の使用は、早期かつ個別的な介入に対する徴候と症状の情報に基づいた正確な識別が容易になる。3(Level 1)
  • リスクファクターだけでなく、口腔内の初期状態を評価するためのベースライン口腔評価に続いて、継続的な標準化された評価は、臨床医が予防および治療戦略の有効性を認識、説明し、患者のニーズに合わせてこれらを調整することに役立てることができる。3(Level 1)
  • 口腔評価に用いられる適切なツールの選択は意義のある結果を確実にするためには不可欠である。システマティックレビューでは、54の口腔評価ツールを特定され、臨床医が日々の臨床実践で活用するため検証済みで、信頼性があり、有用なツールを選択する必要性が強調された。システマティックレビューでは、小児の口腔評価に焦点が当てられていたが、レビューでは、口腔評価ガイド(OAG)が一貫して使いやすく小児と成人の両方に適していると判断された唯一の検証済みのツールであると示した。システマティックレビューでは、既存のツールへのいくつかの潜在的な適応も示唆されており、また世界保健機関(WHO)尺度が口腔粘膜炎の客観的および主観的な測定両方を組み合わせた簡潔で広範囲に使用できるツールであることも言及していた。これら2つのツールの違いは、WHOツールが粘膜炎の重症度を評価できることとであり、OAGは口腔内の全体的な変化を扱えることである。いずれにせよ、選択したツールは医療サービスにおける関連するすべての患者の標準的な実践として使用されるべきである。3(Level 1)
  • 口腔粘膜炎が生活の質に与える影響の大きさのため、臨床医が決定した検証済みの尺度の使用とともに、口腔評価は他の症状に焦点を当てた尺度と疼痛スケールを含むべきである。3(Level 1)
  • 臨床観察と患者の主観的経験の組み合わせの有用性は、他の3つの臨床医アセスメントツールと共に患者報告型口腔粘膜炎システム(PROMS)を使用した最近の研究でも示されてきた。4(Level 3)
  • 包括的な口腔評価に耐えられない患者(例えば、疼痛や予約した診察に来られないなど)に対して、研究では、PROMSが有用であり効果的な代替方法となりうることを示した。4(Level 3)
  • システマティックレビューおよび実践のためのエビデンスに基づく勧告では、疼痛が粘膜炎の重症度とは別の要素として測定されるべきであると提言されており、疼痛は治療と個人の解釈の妥当性に別々に依存する可能性が高く、粘膜炎の重症度だけに依存するものではないことが強調されている。このレビューはまた、評価がスタッフ間で正しく一貫して記入されるようにスタッフ教育の重要性を強調した。5(Level 1)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 53件の研究を含む小児及び若年者に対する口腔評価ツールに関するシステマティックレビュー3
  • 33名の参加者からの結果を含む観察研究4
  • 104件の研究とエビデンスに基づく勧告を含むシステマティックレビュー5

 

 

◉ References

 

  1. Riley P, Glenny AM, Worthington HV, Littlewood A, Clarkson JE, McCabe MG. Interventions for preventing oral mucositis in patients with cancer receiving treatment: oral cryotherapy. Cochrane Database Syst Rev 2015; 12: CD011552.
  2. Barasch A, Epstein JB. Management of cancer therapy-induced oral mucositis. Dermatol Ther 2011; 24(4): 424-31.
  3. Gibson F, Auld EM, Bryan G, Coulson S, Craig JV, Glenny AM. A systematic review of oral assessment instruments: what can we recommend to practitioners in children's and young people's cancer care? Cancer Nurs 2010; 33(4): E1-E19.
  4. Gussgard AM, Hope AJ, Jokstad A, Tenenbaum H, Wood R. Assessment of Cancer Therapy-Induced Oral Mucositis Using a Patient-Reported Oral Mucositis Experience Questionnaire. PLoS ONE 2014; 9(3): e91733.
  5. Eilers J, Harris D, Henry K, Johnson LA. Evidence-based interventions for cancer treatment-related mucositis: putting evidence into practice. Clin J Oncol Nurs 2014; 18 Suppl: 80-96.

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Eric Fong MBBS MPHTM. Evidence Summary. Oral Mucositis: Assessment. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2019; JBI15067. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2019 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細