JBI ── Evidence Summary

〈がん看護〉

頭頸部がん患者における口腔粘膜炎の予防と管理〜ハチミツの効果に関する最良のエビデンスは?

 

Oral Mucositis: Honey for Prevention or Management

Among Patients with Head and Neck Cancer

Eric Fong MBBS MPHTM

5 October 2018

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.172

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

口腔粘膜炎は頭頸部がん治療を受ける人々のあいだでよくみられる副作用である。放射線療法を単独で行う場合や化学療法との併用療法において、入院期間の長期化や体重減少、治療中断/遅延につながる粘膜炎は起こりえる。口腔粘膜炎の予防や管理に用いられる薬剤は数多くあるが、その多くは毒性があり、投与が難しく、患者に容認されにくい。ハチミツは、やけどや傷、潰瘍の治療に効果的であることが知られており、化学療法剤による治療を受けている人々において、炎症の軽減と感染防止の両側面から創傷ケアに対する有効性が実証されている。1

 

  • システマティックレビューとメタ分析では、頭頸部がんに対して放射線療法、または化学療法を受ける人々の口腔粘膜炎の管理におけるハチミツの使用効果について分析された。ハチミツを用いた治療を受けた人々においては、対照群(プラセボ、または無治療)と比較して、治療開始3週間での口腔粘膜炎の発生率と重症度が著しく低かった。治療開始3週間を過ぎると、ハチミツの使用と口腔粘膜炎の重症度は無関係であることが明らかになった。口腔粘膜炎の発生が有意に遅く、体重減少が少ないことは明らかになったが、微生物のコロニー形成と参加者が経験した痛みに関しては有意な差はなかった。著者は、今回含まれていた研究は少数で、比較的参加者が少ないグループであったことから、この分野でのさらなる研究が必要であると認めた。1 (Level 1)
  • マヌカ(Manuka)ハニーは最もよく使われる種類であるが、ダブール(Dabur)、タイム(thyme)、ウエスタン・ガート・フォレスト(Westerns Ghats forest)、エジプト(Egyptian)もまた、研究の中で使用されていた。
  • ハチミツは、放射線療法を単独で受ける人々において、化学療法との併用療法を受ける人々よりも著しく強い効果が見られた(統計的に有意な影響はなかった)。
  • 多くの研究では、治療期間を通して、放射線療法の前、直後、数時間後に20mlの純ハチミツ投与を行っていた。いくつかの研究では、1~2週間投与を継続する、または治療期間を通してハチミツ投与の回数を1日最大5回としていた。
  • システマティックレビューでは、放射線療法を受ける頭頸部がん患者における口腔粘膜炎の重症度、粘膜炎を形成するまでの時間、体重減少、治療中断を減少させることができる点に関するハチミツの効果について評価していた。結果では、治療中断リスクの軽減、体重減少の低下、口腔粘膜炎発症までの時間の延長に対して、ハチミツの使用が有効であることが示された。しかし、参加者自身が経験した口腔粘膜炎の重症度については、影響を受けていないことが明らかとなった。2 (Level 1)
  • システマティックレビューでは、耳鼻咽喉科の分野におけるハチミツを含む蜂の巣製品の使用について調査された。著者は、ハチミツ製剤の処方は、研究間で大いに異なっており(同様のシステマティックレビューのレビューにより確認)、標準化が求められると言及した。3 (Level 5)
  • ハチミツ、プロポリス、またはローヤルゼリー、および放射線療法を受けた参加者の口腔粘膜炎は、発症が遅くなり、治癒がより早くなり、カンジダ感染および病原菌の減少を伴う軽度のものであることがわかった。ハチミツは、放射線誘発口腔乾燥症のある参加者において、ミュータンス連鎖球菌数の減少と関連していることも明らかになった。
  • すでに粘膜炎のある化学療法を受けている参加者において、ハチミツの使用により、粘膜炎の症状の程度を軽減することが明らかになった。
  • 化学療法を受けた人々において、ローヤルゼリーにうがい薬の使用を加えることで、うがい薬を単独で使用する場合と比較して、より早い治癒を促進し、粘膜炎の発症予防、重症度、および治癒に要する時間の点においても効果的であることが明らかとなった。
  • 併用化学放射線療法を受けた小児において、ハチミツは口腔粘膜炎から完全に回復するまでの時間を改善するようであったが、放射線療法を単独で受けた小児では、粘膜炎の発生している間の重症度には影響しなかった。
  • 頭頸部がんの手術後に微小血管を含まない組織再建を受けた参加者では、感染率については影響がなかったが、入院期間の短縮が認められた。
  • システマティックレビューは、がんに対する治療を受けている人々における口腔粘膜炎の予防的介入について評価するために実施された。69件の研究において、頭頸部がんに対する治療のみを受けている参加者に対し、3件の研究でハチミツが介入として使用されていた。中程度から重度、および重度の粘膜炎といったあらゆる粘膜炎の予防において、ハチミツが中程度の効用があるという限定的なエビデンスがあることが明らかとなった。著者らは、有意な統計的異質性とバイアスのリスクが存在するため、これらの結果の考察には注意が必要だと言及した。4 (Level 1)
  • エビデンスに基づくガイドラインは、ハチミツを含む天然の物質の検討を含んだシステマティックレビューの基本に基づいて作成された。限定的でconflictingなエビデンスが明らかになったため、口腔粘膜炎の予防と管理のための治療にハチミツを用いることに関するガイドラインは作成されなかった。5(Level 5)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 9件の研究と476人の参加者を含むシステマティックレビュー1
  • 8件の研究と244人の参加者を含むシステマティックレビュー2
  • 36件の研究を含むシステマティックレビュー(6件の研究では、頭頸部がんの参加者を含む)3
  • 131件の研究と10,514人の参加者を含むシステマティックレビュー4
  • システマティックレビューと専門家の意見をもとに作成されたエビデンスに基づいた臨床ガイドライン5

 

 

◉ References

 

  1. Cho HK, Jeong YM, Lee HS, Lee YJ, Hwang SH. Effects of honey on oral mucositis in patients with head and neck cancer: A meta-analysis. Laryngoscope 2015; 125(9): 2085-92.
  2. Co JL, Mejia MBA, Que JC, Dizon JMR. Effectiveness of honey on radiation-induced oral mucositis, time to mucositis, weight loss, and treatment interruptions among patients with head and neck malignancies: A meta-analysis and systematic review of literature. Head & Neck 2016; 38(7): 1119-28.
  3. Henatsch D, Wesseling F, Kross KW, Stokroos RJ. Honey and beehive products in otorhinolaryngology: a narrative review. Clinical Otolaryngology 2016: [Advance Online].
  4. Worthington HV, Clarkson JE, Bryan G, Furness S, Glenny AM, Littlewood A, et al. Interventions for preventing oral mucositis for patients with cancer receiving treatment. Cochrane DB Syst Rev 2011; (4).
  5. Lalla RV, Bowen J, Barasch A, Elting L, Epstein J, Keefe DM, et al. MASCC/ISOO clinical practice guidelines for the management of mucositis secondary to cancer therapy. Cancer 2014; 120(10): 1453-61.

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Eric Fong MBBS MPHTM. Evidence Summary. Oral Mucositis: Honey for Prevention or Management Among Patients with Head and Neck Cancer. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2018; JBI16027. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8.Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2018 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細