JBI ── Evidence Summary

〈がん看護〉

緩和ケアにおけるコミュニケーションと意思決定に関する最良のエビデンスは?

 

Palliative Care: Communication and Decision-Making

Dr Susan Slade, BScApp (Physio), Grad Dip Manip Ther, M Musc Ther, PhD

4 April 2018

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.152

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

緩和ケアとは、疾患が治癒的治療に反応しない患者に対する積極的トータルケアである。緩和ケアは、心理的、精神的側面を統合した患者ケアであり、患者が死亡するまで可能な限りアクティブに生活できるように支援する。また、患者の罹患中や死別に対して家族が対処するのを支援するシステムでもある1, 2。緩和ケアは、病院、在宅医療施設、高齢者介護施設、またはその他の環境でも提供される3。

 

  • QOLと快適性という観点において、いつ延命アプローチから緩和アプローチへ移行するのがいいのかというのは個人、家族、医師にとって感情的、臨床的に難しいことだということが専門家の意見書の中で述べられていた。意思決定プロセスの重要な要素には、予後、介入のリスクベネフィット分析、現在の苦痛な症状、病気の時間的パターン、年齢とライフステージ、ケアの目標が含まれる 4 (Level 5) 。
  • システマティックレビューでは、多くの要素が緩和ケアに関する医師との個人的コミュニケーションに影響を受けていることが報告されていた。報告されていた促進要素には、医師の利用可能性、長年にわたる医師との関係性、自由で様々なトピックについて話し合うこと、積極的に耳を傾けて終末期の問題について話し合うためのイニシアチブをとること、診断や予後や、死への準備、患者の終末期に希望することについて話す気があることが含まれていた。障壁要素には、時間がないこと、予後について知ることを躊躇したり望まないこと、医師が診断や予後について誠実に話をしないことが含まれていた 5 (Level 1)。
  • 緩和ケアにおける意思決定の共有に関するエビデンスを統合したシステマティックレビューによると、治療決定にある程度参加を希望する人が多数派であったことが報告されていた。このレビューでは、ほとんどの人が意思決定が遅れ、代替医療の選択肢についてほとんど話し合われなかったために、望ましい関与レベルに達していなかったと報告されていた 6 (Level 1)。
  • システマティックレビューでは、急性期ケア場面での終末期の意思決定における看護師の役割と対策に関する文献を評価した。このレビューにより、情報仲介人、支援者、支持者という3つの重要な看護師の役割が確認された 7 (Level 1)。
  • システマティックレビューでは、適切なコミュニケーションに対する医師関連の障壁、および、集中治療室にて終末期を迎える個人またはその家族を中心とする意思決定に対する障壁を評価した。このレビューでは、90の障壁が報告されていた。その内訳としては、医師の態度に関連した46、医師の知識に関連した24、そして医師の実践に関連した20であった。著者は、終末期ケアに関連する知識、態度、実践を高めるためには、より良い医師の教育と緩和ケアガイドラインが必要であると結論付けた 8 (Level 1)。
  • システマティックレビューでは、終末期のコミュニケーションを対象とした介入のエビデンスについて評価した。このレビューでは、介入はコミュニケーションスキルトレーニング、教育、アドバンストケアプランニング(ACP)、体系化された実践の変更、特に対象となる医療専門家(特にがん治療に関わる現場)だけでなく、患者と介護者を含むさまざまな形態をとったことを報告した。レビューアーは、多焦点からの介入により、終末期のコミュニケーションに対する障壁をより効果的に取り除くことができると結論付けた。9 (Level 1)
  • システマティックレビューでは、非がん領域の急性期医療スタッフによる終末期ケアにおけるコミュニケーションスキルトレーニングへの介入の有効性を評価した。このレビューでは、がん領域以外のサービスに関する限定的な研究について報告したが、自信、態度、自己効力感、およびコミュニケーションスキルに関する医療専門職とのさまざまなトレーニング介入の潜在的な有効性を実証した。10 (Level 2)
  • 終末期の意思決定を支援するコミュニケーションツールの有効性を評価するために、システマティックレビューが実施された。これらのツールには、意思決定支援、構造化された会議の計画、教育的な介入が含まれていた。著者らは、構造化されたコミュニケーションツールを使用すると、アドバンストプランニングに関する議論の回数が増加したと報告した(リスク比(RR):1.92、95%CI:1.43から2.59)。死亡した人々の場合、コミュニケーションツールを使用することによって、実際のケアと患者が望んだケアとの一致率が統計的に有意に増加していた(RR:1.17、95%CI:1.05から1.30)。コミュニケーションツールの使用は、生命維持治療の希望を減少させた(RR:0.62、95%CI:0.41から0.94)11 (Level 1)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 意見書 4
  • 15件の質的研究と7件の量的研究を含むシステマティックレビュー 5
  • 37件の論文を含むミックスメソッドシステマティックレビュー 6
  • 44件の論文を含むミックスメソッドシステマティックレビュー 7
  • 18件の質的研究と18件の調査研究を含むシステマティックレビュー 8
  • 45件の実験、または準実験研究を含むシステマティックレビュー 9
  • 10件の準実験研究を含むシステマティックレビュー 10
  • 46件のRCTと21件の観察研究を含んだ67件の研究を含むシステマティックレビュー 11

 

 

◉ References

 

  1. Sepulveda C, Marlin A, Yoshida T, Ullrich A. Palliative Care: the World Health Organization's global perspective. J Pain Symptom Manage. 2002; 24(2): 91-96. (Level 5)
  2. World Health Organization. WHO definition of palliative care. 008. [Cited 10 July 2008. Available from URL: http://www.who.int/cancer/palliative/definition/en/ (Level 5)
  3. Davies E, Higginson I. Better palliative care for older people: World Health Organization (WHO) Europe; 2004. [Cited 10 July 2008. Available from URL: www.euro.who.int/document/E82933.pdf (Level 5)
  4. Weissman DE. Decision making at a time of crisis near the end of life. JAMA. 2004; 292(14):1738-1743. (Level 5)
  5. Slort W, Schweitzer BP, Blankenstein AH, Abarshi EA, Riphagen, II, Echteld MA, et al. Perceived barriers and facilitators for general practitioner-patient communication in palliative care: a systematic review. Palliat Med. 2011; 25(6):613-629. (Level 1)
  6. Belanger E, Rodriguez C, Groleau D. Shared decision-making in palliative care: a systematic mixed studies review using narrative synthesis. Palliat Med. 2011; 25(3):242-261. (Level 1)
  7. Adams JA, Bailey DE, Jr., Anderson RA, Docherty SL. Nursing roles and strategies in end-of-life decision making in acute care: a systematic review of the literature. Nurs Res Pract. 2011; 527834. (Level 1)
  8. Visser M, Deliens L, Houttekier D. Physician-related barriers to communication and patient- and family-centred decision-making towards the end of life in intensive care: a systematic review. Crit Care. 2014; 18(6):604. (Level 1)
  9. Walczak A, Butow PN, Bu S, Clayton JM. A systematic review of evidence for end-of-life communication interventions: Who do they target, how are they structured and do they work? Patient Educ Couns. 2016; 99(1):3-16. (Level 1)
  10. Lord L, Clark-Carter D, Grove A. The effectiveness of communication-skills training interventions in end-of-life non-cancer care in acute hospital-based services: A systematic review. Palliat Support Care. 2015:1-12. (Level 2)
  11. Oczkowski SJ, Chung HO, Hanvey L, Mbuagbaw L, You JJ. Communication Tools for End-of-Life Decision-Making in Ambulatory Care Settings: A Systematic Review and Meta-Analysis. PLoS One. 2016; 11(4): e0150671. (Level 1)

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Dr Susan Slade, BScApp (Physio), Grad Dip Manip Ther, M Musc Ther, PhD. Evidence Summary. Palliative Care: Communication and Decision-Making. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2018; JBI14788. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2018 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細