JBI ── Evidence Summary

〈急性・重症患者看護〉

不安定型骨盤骨折の初期管理に関する最良のエビデンスは?

 

Unstable Pelvic Fracture: Initial Management

Vivek Podder, MBBS candidate

16 August 2018

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.77

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

骨盤は、仙骨とその両側に座骨、腸骨、恥骨からなる平面の骨が融合した骨輪で構成されている。骨折によるこの骨輪のゆがみによって、広範囲の後腹膜出血、骨盤不安定症および臓器障害を引き起こす可能性がある。失血は、静脈叢病変、出血性骨折部位、動脈損傷などいくつかの原因から起こる1。致死的出血は、骨盤輪破断を伴う様々な負傷患者における外傷後の主な死因として同定されている2

 

  • 骨盤骨折の管理のための緊急的な介入としての骨盤パッキングの有効性を評価したシステマティックレビューがある。このレビューの著者は、重複外傷を受けた患者の蘇生中において、骨盤骨折の失血を減らすための最も効率的な蘇生法は、いち早く止血することであると報告した2 (Level 4)
  • 外周圧迫は病院に向かう前の段階で容易に実現可能であり、輸送中および蘇生中において有効な骨盤安定化を可能にする。骨盤の周りに巻きこんだシーツは費用対効果が高く、非侵襲的で、簡単に適用できる1 (Level 3)
  • 事故現場における非侵襲的骨盤外周圧迫装置(pelvic circumferential compression device: PCCD)は、早期の骨折固定としてよく適用されている。その場でPCCDを実施することによって、患者は外傷センターに輸送することができるようになる。そして、その外傷センターにて骨盤固定の適用もしくは動脈出血のコイル塞栓術によって骨盤の正確な安定化を行うことができる1 (Level 3)
  • メタ分析によって、PCCDは根本治療と比較して水平変異を減少させるという良い効果があることが示された。PCCDの適用によって、対照群と比較して損傷後から48時間以内の輸血の必要性が大幅に削減された1 (Level 3)
  • 臨床診療ガイドラインの著者が提言したことは、血行動態が不安定な状況では、前後圧迫(APC)タイプⅡおよびタイプⅢ、横圧迫(LC)タイプⅢ、垂直せん断(VS)、複合機械的損傷(CMI)骨折に対する骨盤の安定化は、できる限り即座に実施する必要がある3 (Level 5)
  • 外的安定化テクニックは、深刻な状況において、医師が止血治療を行う時間を節約できる程度の一時的な解決策にすぎない。外的抑制と一時的な安定化のための第一次介入はすべて、できるだけ早く固定安定化テクニックに置き換える必要がある3 (Level 5)
  • システマティックレビューで調査されたことは、不安定型骨盤骨折に関連した後腹膜動脈出血を抑えるための救急医療における経カテーテル動脈塞栓術(TAE)の有効性であった。著者らが報告したことは、緊急のTAEは、合併症する可能性の低い重度の動脈出血を抑えるための効果的な緊急的介入であるということであった。効果的に出血が抑えられる前に、繰り返し実施することが必要になることがある5 (Level 4)
  • システマティックレビューにおいて、骨盤骨折後の出血制御に対するPCCDの有効性と安定性のエビデンスを評価した。著者は、外的圧迫により骨盤輪破断を軽減できると報告していた。しかし、著者はPCCDの有効性を評価できるだけの質の高い比較試験が不足していること、また、既存の文献は異質性が含まれており方法論の質が乏しいことも報告していた。したがって著者は、その手法(PCCD)はよく考えて用いることを推奨していた6 (Level 1)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • コホート、ケースコントロール、ケースシリーズを含む17件の研究を含んだシステマティックレビュー1
  • 3件のケースシリーズを含んだシステマティックレビュー2
  • エビデンスに基づいた1件の臨床診療ガイドライン3
  • 21件のケースシリーズを含んだシステマティックレビュー5
  • ランダム化比較試験、コホート研究、ケースシリーズを含んだ16件の研究のシステマティックレビュー6

 

 

◉ References

 

  1. Spanjersberg WR, Knops SP, Schep NW, van Lieshout EM, Patka P, Schipper IB. Effectiveness and complications of pelvic circumferential compression devices in patients with unstable pelvic fractures: a systematic review of literature. Injury. 2009; 40(10): 1031-5.
  2. Papakostidis C, Giannoudis PV. Pelvic ring injuries with haemodynamic instability: efficacy of pelvic packing, a systematic review. Injury. 2009; 40 Suppl 4:S53-61.
  3. Heetveld M. The management of haemodynamically unstable patients with a pelvic fracturwe. Sydney: NSW ITIM. 2007.
  4. Papakostidis C, Kanakaris N, Dimitriou R, Giannoudis PV. The role of arterial embolization in controlling pelvic fracture haemorrhage: a systematic review of the literature. Eur J Radiol. 2012; 81(5):897-904.
  5. Bakhshayesh P, Boutefnouchet T, Tötterman A. Effectiveness of non invasive external pelvic compression: a systematic review of the literature. Scand J Trauma Resusc Emerg Med. 2016;24(1):73

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards.How to cite: Vivek Podder, MBBS candidate. Evidence Summary. Unstable Pelvic Fracture: Initial Management. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2018; JBI3887. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2018 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細