JBI ── Evidence Summary

〈急性・重症患者看護〉

DNRオーダーに関する最良のエビデンスは?

 

Do Not Resuscitate Orders: Clinician Information

Stephanie Obeid, BMedSc (Hons), PhD

16 October 2017

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.93

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

DNRオーダーは、多くの場合、急性疾患や高齢の患者に適用される(予後不良とみなされる患者と親族の同意の課題がある1

 

  • 横断研究により、DNRの患者はアスピリンを投与された可能性が低いこと(出血性脳卒中患者を除く)、言語聴覚士が嚥下の評価をしている可能性が高いこと、脳卒中チームが7日以内にケアする可能性が低いことが示された1 (Level 3)
  • メタ分析レビューにより、死亡した患者は高齢、白人、メディケア加入(アメリカの保険制度)、人工呼吸器使用、入院後24時間以内のDNRの作成、の要因を持つ患者に多かった2 (Level 1)
  • また、このレビューでは、入院後24時間以内にDNRを作成した患者はDNRオーダーを作成しなかった患者より全体的に2.6倍死亡する可能性が高いことが分かった2 (Level 1)
  • 後ろ向き研究では、心肺蘇生を試みた後に患者の46%が死亡し、DNRの順序が有効である場合は54%が死亡することも判明した。3 (Level 3)
  • さらに、DNRオーダーの有無にかかわらず、平均死亡年齢は9.8歳であった(小児科病院での調査)3 (Level 3)
  • 後ろ向き研究において、入院患者を対象として蘇生決定の文章を監査した結果、次の推奨事項を提示した: 4 (Level 5)
  • CPRが成功しそうにない場合、明確なメリットがない場合、期待されるメリットよりも負担が大きい場合においてDNRオーダーを作成するのが適切である。
  • 蘇生の決定は、理由を明記し、コンサルタントの関与のあるシニアチームメンバーによって行われ、看護記録に記載し、その他の治療の適切性についての参照が含まれる。また、その決定は定期的に見直される
  • 可能であれば、DNRの話し合いは早い段階で行うか、事前指示書での蘇生に対する意向の申告を含む家族との事前の話し合いから行う必要がある
  • 放射線治療中の入院患者のDNRオーダーの使用に関する質保証調査により、患者のほぼ3分の1がDNRの状態を文章化していたが、インフォームドコンセントが得られたのは半分未満で合ったことが分かった5 (Level 5)
  • 終末期の計画に関して患者と医師との間で有意義な話し合いが行われるべきであり、蘇生の決定には患者の関与が倫理的義務であるべきだという文献の合意があった5 (Level 5)
  • 小児腫瘍患者の後ろ向きレビューでは、DNRオーダー後においても受けている医学的介入が高頻度で継続されていることが分かった。化学療法を継続したのは少数の患者のみであった。これはおそらく目標地点の変化を示している6 (Level 5)
  • 実践についての考察に基づいた専門家の意見は、以下を示唆していた;7 (Level 5)
  • 医師はDNRオーダーに関して患者/介護者との話し合いをリードする責任があるべきである
  • 話し合いには、患者のケアの目標の設定、患者の疾患経過に関する医師決定者の教育、CPRの予後、メリットとリスク、および徹底した医学的アセスメントに基づいて蘇生を推奨するか蘇生を拒否するかが含められる必要がある。
  • 患者の入院から72時間以内に、そして患者の状態が変化した時に再度話し合いをする必要がある
  • 話し合いの内容は、患者の記録に明確に文章化する必要があり、患者のケアに関係する人には通知する必要がある
  • DNRオーダーの話し合いの対象となる対象者には次の項目が含まれる必要がある:終末期疾患を持つ人、不可逆的かつ重症の病気による機能低下のある人(例として、うっ血性心不全クラスⅣ、進行性慢性閉塞性肺疾患、進行性認知症、終末期のがん患者)、不可逆的な意識不明に陥っている人、蘇生して生き残る可能性が低い人、そして心停止もしくは呼吸停止のリスクが高い人。
  • 後ろ向きデータベース分析により、DNRオーダーをすでに行っている患者に対する急変対応チーム(rapid response team: RRT)の呼び出しは珍しくなかったことが示された。患者は、呼び出し時に異常な呼吸所見があり、介入のレベルとしては同一であり、ICUに入院する可能性が低く、RRTの呼び出しを今後しないことについての記録を残す可能性が高い8 (Level 3)
  • 外傷患者を対象とした前向きコホート研究では、死亡リスクが最も高い時間帯である24時間の後、重症ショック状態にない高齢患者により頻繁にDNRオーダーが行われたことが報告されていた9 (Level 3)
  • 後ろ向きデータベース分析により高齢のDNR患者の腸閉塞に対する緊急外科的介入後の転帰は不良であり、術後の合併症と死亡率が高いことが示された。つまり、DNRオーダーの存在は、術後死亡の独立リスク因子であった10 (Level 3)
  • システマティックレビューでは、最も良好な介入として病院への緊急入院時の構造化された話し合いと、急性悪化時の専門家チームによる見直しが含まれていた。DNRの決定を全体的な治療計画に関する話し合いと結びつけることにより、ケアの目標についてより明確になり、医師間のコミュニケーションを助け、有害事項の減少をもたらした。標準化された記事は、DNRの決定を記録する頻度と質の改善に役立つ。患者および医師を単独で教育することは効果が限定的もしくは効果がない11 (Level 1)
  • システマティックレビューにより、DNRは65歳未満の患者と比較して、75~84歳の年齢層と85歳以上の患者でより多く作成されることが示された。10件の研究のうち8件は、DNRと併存疾患とは無関係であると言及されていた12 (Level 1)
  • 後ろ向き研究により、ICU入棟中での死亡率に対するDNRの影響が評価された。この研究では、ICUに入院した患者の6.5%がDNRに署名し、48時間生存したことを報告していた。さらに28日間と1年間の死亡率はDNRグループにおいて高かった(両方ともp < 0.001)13 (Level 3)

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 702人の患者を含む横断研究1
  • 234件の病院と8233人の患者を含むメタ分析レビュー2
  • 2002年1月から2005年12月の間に死亡した101人の患者を対象とした後ろ向き研究3
  • 50人の患者を対象とした後ろ向き監査研究4
  • 96人の患者を対象とした質保証調査5
  • 2001年7月1日から2005年2月28日までに死亡したSt. Jude Children's Research Hospitalの小児腫瘍患者200人の後ろ向き研究6
  • 米国のDNRオーダーを後ろ向きにレビューした専門家の意見7
  • 1258人の患者のデータベース分析8
  • 245人の患者の前向きコホート研究9
  • 242名の患者のデータベース分析10
  • 37件のランダム化および非ランダム化比較試験のシステマティックレビュー
  • 10件のシステマティックレビューとメタ分析12
  • 19007名の患者を含む後ろ向き研究13

 

 

◉ References

 

  1. Mohammed MA, Mant J, Bentham L, Stevens A, Hussain S. Process of care and mortality of stroke patients with and without a do not resuscitate order in the West Midlands, UK. Int J Health Care. 2006; 18 (2): 102-106. (Level 3)
  2. Hemphill C, Newman J, Zhao S, Johnston C. Hospital usage of early Do-Not-Resuscitate Orders and outcome after intracerebral hemorrhage. Stroke. 2004; 35 (5): 1130-1134. (Level 1)
  3. Jaing T, Tsay P, Fang E, Yang S, Chen S, Yang C, Hung I. “Do-not-resuscitate” orders in patients with cancer at a children’s hospital in Taiwan. J Med Ethics; 2007. 33: 194-196. (Level 3)
  4. Harris D, Davis R. An audit of "do not attempt resuscitation" decisions in two district general hospitals: do current guidelines need changing? Postgrad Med J. 2007;83:137-140. (Level 5)
  5. Fairchild A, Kelly KL, Balogh A. In pursuit of an artful death: discussion of resuscitation status on an inpatient radiation oncology service. Support Care Cancer. 2005;13(10):842-849. (Level 5)
  6. Baker JN, Kane JR, Rai S, Howard SC, Hinds PS. Changes in medical care at a pediatric oncology referral center after placement of a do-not-resuscitate order. J Palliat Med. 2010;13(11):1349-52. (Level 5)
  7. Yuen JK, Carrington Reid M, Fetters MD. Hospital do-not-resuscitate orders: why they have failed and how to fix them. J Gen Intern Med. 2011;(26)7. (Level 5)
  8. Coventry C, Flabouris A, Sundararajan K, Cramey T. Rapid response team calls to patients with a pre-existing not for resuscitation order. Resuscitation. 2013;84(8): 1035-9. (Level 3)
  9. Wade CE, del Junco DJ, Fox EE, Cotton BA, Cohen MJ, Muskat P, et al. Do-not-resuscitate orders in trauma patients may bias mortality-based effect estimates: an evaluation using the PROMMTT study. J Trauma Acute Care Surg. 2013;75(1 Suppl 1):S89-96. (Level 3)
  10. Speicher PJ, Lagoo-Deenadayalan SA, Galanos AN, Pappas TN, Scarborough JE. Expectations and outcomes in geriatric patients with do-not-resuscitate orders undergoing emergency surgical management of bowel obstruction. JAMA Surg. 2013;148(1):23-8. (Level 3)
  11. Field RA, Fritz Z, Baker A, Grove A, Perkins GD. Systematic review of interventions to improve appropriate use and outcomes associated with do-not-attempt-cardiopulmonary-resuscitation decisions. Resuscitation. 2014;85(11):1418-31. (Level 1)
  12. Cook, Ifor et al. End of Life Care and Do Not Resuscitate Orders: How Much Does Age Influence Decision Making? A Systematic Review and Meta-Analysis. Gerontology and geriatric medicine 3 (2017): 2333721417713422. PMC. Web. 16 Oct. 2017. (Level 1)
  13. Fuchs, L et al. Quantifying the Mortality Impact of Do-Not-Resuscitate Orders in the ICU. Crit Care Med. 2017 Jun;45(6):1019-1027. (Level 3)

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Stephanie Obeid, BMedSc (Hons), PhD. Evidence Summary. Do Not Resuscitate Orders: Clinician Information. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2017; JBI706. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2017 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細