JBI ── Evidence Summary

〈急性・重症患者看護〉

気管チューブの位置を確認する際の超音波の精度に関する最良のエビデンスは?

 

Endotracheal Tube Placement Verification: Ultrasound

Lucylynn Lizarondo, PhD, MPhysio, MPsych, BPhysio

10 October 2017

 

JBI:推奨すべき看護実践』p.81

 

 

 

◉ 臨床上重要な事実

 

気管内挿管は、機械的換気が必要な重症患者のための人工気道である1 気づかずに気管チューブを誤挿入していることによって深刻な合併症(例えば神経学的損傷や死亡など)を引き起こす可能性があるため、気管チューブが適切な位置にあるか確認することは気道を管理する上で重要なステップである1,2 チューブの配置を確認する方法はいくつかある。これまでカプノグラフィがゴールドスタンダードとして考えられてきた。しかし、これらすべての確認方法に重大な限界があった1,2 近年、気管チューブの配置を確認するための超音波の精度を調べる研究が増加している。

 

  • メタ分析を行ったシステマティックレビューによって、食道挿管の検出における超音波検査の精度が評価された。超音波検査法の推定統合感度および特異度はそれぞれ、0.93 (95%CI 0.86 – 0.96) および0.97 (95% CI 0.95 – 0.98)であった。陽性尤度比は26.98 (95% CI 19.32 – 37.66)であり、陰性尤度比は0.08 (95% CI 0.04 – 0.15)であった。ROC曲線下面積は許容可能な精度であった (0.97)。サブグループ分析も行っており、気管の超音波検査では、指導医(attending physicians)は研修医(resident physicians)と比べてより良い感度を示していた(指導医:0.98, 95% CI 0.96 – 0.99、研修医:0.92, 95%CI 0.78 – 0.96)。救急にて実施した気管の超音波検査は、他の状況と比較した結果、低い感度であった (0.88, 95% CI 0.76 – 0.94)。リアルタイムで行われた気管の超音波検査は、停止状態(挿管後)でおこなわれたもの  (0.91, 95% CI 0.70 – 0.98)よりも高い感度(0.94, 95% CI 0.86 – 0.98)であった。1(Level 1)
  • ヒトの死体を対象とした3件の研究、手術室における患者を調査した3件の研究、そして救急患者を調査した6件の研究がある。10件の研究にて気管の超音波検査が使用され、4件の研究が肺の超音波検査を使用し、その他2件が気管および肺の超音波の両方を使用して気管チューブの配置を確認した。参考標準として使用されたのは、大部分の研究がカプノグラフィまたはEtCO2(呼気終末二酸化炭素分圧)検出器であり、いくつかの研究が直接喉頭鏡検査、胸部聴診または胸部X線撮影のような他の方法を使用していた。
  • メタ分析を行ったシステマティックレビューによって、気管挿管の検出における経気管超音波検査の精度が評価された。このレビューに含まれていた11の研究のうち6つは、上記のシステマティックレビューでも検討されていた研究であった。超音波による気管チューブ内地の適切性の検出のための統合感度および特異度はそれぞれ、0.98 (95% CI 0.97 to 0.99) と 0.98 (95% CI 0.95 to 0.99)であった。緊急挿管における超音波の統合感度および特異度はそれぞれ0.98 (95% CI 0.97 to 0.99) と 0.94 (95% CI 0.86 to 0.98)であった。
  • 3件の研究で、待機的(緊急ではない)挿管における超音波の精度が検討され、他の研究では緊急挿管における超音波の評価が行われた。

 

 

◉ エビデンスの特性

 

このエビデンスの要約は、構造化された文献検索および厳選された科学的根拠に基づくヘルスケアデータベースを基盤としている。要約に含まれるエビデンスは以下のものである。

 

  • 計1656件の挿管施行を含む12件の研究のシステマティックレビュー(そのうち550件が食道挿管と判断された)1
  • 計969件の挿管施行を含む11件の研究のシステマティックレビュー2

 

 

◉ References

 

  1. Chou EH, Dickman E, Tsou P-Y, Tessaro M, Tsai Y-M, Ma M, Lee C-C, Marshall J. Ultrasonography for confirmation of endotracheal tube placement: a systematic review and meta-analysis. 2015; 90:97-103. (Level 1)
  2. Das S, Choupoo N, Haldar R, Lahkar A. Transtracheal ultrasound for verification of endotracheal tube placement: a systematic review and meta-analysis. Can J Anesth/J Can Anesth. 2015; 62:413-423. (Level 1)

 

 

The author declares no conflicts of interest in accordance with International Committee of Medical Journal Editors (ICMJE) standards. How to cite: Lucylynn Lizarondo, PhD, MPhysio, MPsych, BPhysio. Evidence Summary. Endotracheal Tube Placement Verification: Ultrasound. The Joanna Briggs Institute EBP Database, JBI@Ovid. 2017; JBI1319. For details on the method for development see Munn Z, Lockwood C, Moola S. The development and use of evidence summaries for point of care information systems: A streamlined rapid review approach. Worldviews Evid Based Nurs. 2015;12(3):131-8. Note: The information contained in this Evidence Summary must only be used by people who have the appropriate expertise in the field to which the information relates. The applicability of any information must be established before relying on it. While care has been taken to ensure that this Evidence Summary summarizes available research and expert consensus, any loss, damage, cost or expense or liability suffered or incurred as a result of reliance on this information (whether arising in contract, negligence, or otherwise) is, to the extent permitted by law, excluded. Copyright © 2017 The Joanna Briggs Institute licensed for use by the corporate member during the term of membership.

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

JBI ── Evidence Summary

この「JBI─Evidence Summary」を根拠とする、推奨すべき実践ベストプラクティスを以下の書籍で詳しくご紹介しています。

『JBI:推奨すべき看護実践

〜海外エビデンスを臨床で活用する

植木慎悟・山川みやえ 編  牧本清子 監修

The Joanna Briggs Institute 協力

日本看護協会出版会 刊行

世界中の膨大な看護ケアに関する文献を収集し、分析と統合を行うJoanna Briggs Instituteのエビデンス情報の中から、日本の各分野のCNSなどが43の具体的な看護場面を取り上げました。わが国の臨床事情を踏まえてコメントと解説を加えた最新のベストプラクティス集です。>> 詳細