対談

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研究全体のレベルアップを

実感するも……

 

菱沼:初版から第2版刊行の間に、看護界全体の研究のレベルも上がってきました。「ともかく何らかの方法で測ってみよう」と始めたのが、今は測定ツールも多く手にしましたし、意図的に効果を導き出すような介入や、そこからエビデンスを示す工夫ができるようになった。指標を使いこなす能力が確実に上がってきています。

 

もう一つ、経験的なケアがなぜ有効なのかを科学的に検証した結果、それを「普及させる」という段階に進み始めています。これはとても意義のあることで、少し前の「研究しました、結果に差が出ました、論文にまとめました」というレベルから、よいケアを患者に還元するところまで達している人たちがいるということです。第2版にはそういうテーマがいくつかあって、看護研究が進化しているのを感じますね。

 

第2版の【第4部:看護研究を積み重ね,看護技術に還元する】にある「温罨法」「背面開放座位」「点滴漏れのケア」については、そろそろ普及してもいいと思うんですが、最近とったアンケートでは、全く普及していないということが明らかになって(苦笑)。

 

川島:ナースは勉強家だけれども、情報をきちんと活用していない人が多いのも事実ね。書く側は「これだけ何度も発表しているのに!」と思うけれど。

 

菱沼:「温罨法」は企業と組んで研究もしましたが、製品化されたものを臨床で使うのは難しいですね。熱いタオルを絞るのはタダだけれど、商品を使うと患者さんにとっても自費になってしまいますからね。

 

川島:その話から関連して、東日本大震災のときに、蒸気で温めるシートを製品化した研究所に、「ひもを引くとすぐ温まるようなおしぼりを製品化してほしい」と頼んだんです。

 

結局、いろいろな事情で実現化はしなかったけれど、看護の視点でもっといろんな人に要望していいし、そういう意味での強さが必要だと思います。あのとき温かいおしぼりがあったら、どれだけ被災地の皆さんを慰めただろうかと思うと、本当に残念でなりません。

 

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