日本看護協会出版会 特別企画

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書 籍

ナース発 新型コロナウイルス感染症 現場レポート
その時、看護師たちは何を体験し、 どのように考え、いかに行動したのか。 総勢100名を超える最前線の声を収録。

●発 行 日本看護協会出版会

●刊 行 2020年冬(予定)

●体 裁 A5/約300頁

●定 価 未定

原稿募集中

本書について

2011年3月に発生した未曾有の災害・東日本大震災。弊社では、自らも被災しながら懸命に看護を続けた人、現地に赴き支援した人、被災者を受け入れ医療を提供した人など、さまざまな形で活躍した183名のナースの声を集め、700ページを超える書籍『ナース発 東日本大震災レポート』を出版しました。当時の看護職の思いが詰まった貴重な記録集です。

 

そして2020年、世界中に拡大するコロナ禍はすべての人々を巻き込む「大災害」となり、いま現在も数多くの医療職が現場の最前線に臨んでいます。自らの感染や過重労働といった危機に直面しながら、看護職が実際にそこで何を体験し、どう考え、いかに行動したのかを後世に記録として残すため、弊社では『ナース発 新型コロナウイルス感染症 現場レポート』の出版を企画しました。

構成内容

<Part 1 現場レポート>

  • 患者を受け入れた医療機関(感染症指定病院・それ以外の病院・診療所など小規模医療機関)
  • 院内感染が発生した医療機関
  • 帰国者・接触者相談センター
  • ダイヤモンド・プリンセス号
  • 軽症患者受け入れ宿泊療養施設
  • 保健所
  • 地域の高齢者施設、訪問看護ステーションなど
  • 海外のナースたち

 

<Part 2 個人の生活への影響>

  • 感染拡大の影響を大きく受けた現場(最前線、後方支援)
  • 日常生活にどんな影響があったか(過剰労働/家族への感染/感染を避けての外泊/学校や保育園での子どもへの差別/休校による育児の負担/家族との摩擦、など)
  • 休職・離職からの復職
  • 退職(うつ状態/感染への恐怖/バーンアウト/家族からの反対、など)

<Part 3 ナースたちの「コロナ日記」>

  • 看護職として、労働者として、学生として、母・父として、娘・息子・孫として、一人の市民として、考えたこと・感じたこと・行動したことなどを、日記・雑記形式で

 

<Part 4 各種団体の活動>

  • 職能団体(日本看護協会、日本助産師会など)
  • 学術団体(看護系学会・研究会など)
  • その他の団体・組織・グループ

 

<Part 5 教育機関>

  • 看護系大学・専門学校の授業への影響と対応(教員)
  • 看護学生の受け止め・思い(学生)

 

<解説・コラム>

  • 感染症学、ウイルス学、疫学、治療法、ワクチン・薬剤などの医学情報
  • 医療専門職以外の周辺業種や経済的な話題など(領域を問わず)
一部をご紹介
 「あなたを診察し、治療やケアにあたるのは、 疲弊しきった医療スタッフなのだ。」──“コロナ日記”より むつきつゆこ(看護師4年目 都内大病院勤務) ──2020年4月某日 緊急事態宣言が発令されたとき、私は呑気にテレビを見ながらご飯を食べていた。緊急事態宣言が出たところで、土日休みでもなく、在宅勤務もできない自分には明日も今日と変わらないだろうと思った。その日はいつもと同じようにご飯を食べて寝た。次の日から困ったことは、トイレットペーパーとティッシュが店からなくなったことだ。いつもより両方とも節約しなければならなくなった。 一週間後くらいから、使い放題だった病院のマスクと防護服に使用制限が設けられた。あれよあれよという間に、1日1枚から3日に1枚に変更され、フェイスシールドは使用後に消毒するゴーグルになった。今まで、あれだけ院内感染予防に努めていたのに、あっという間に根拠があるのかないのか定かではない感染対策に変貌した。休憩室や食堂での職員間での会話は禁止され、私生活での外食も禁止になった。私生活での行動も統制され、戦時中かと思った。 そんなある日、自分にもCOVID-19に罹患した患者を担当する日が訪れた。患者は部屋の外からも聞こえてくるほどの咳をしていた。髪の毛が短いため防護服の帽子から少しはみ出た。これなら髪を伸ばしてまとめた方がしっかりと防護できると思ったので髪を伸ばすことにした。病室に入る前はいよいよこの時が来たか……と意気込んだが、患者と接するときは冷静になれた。帰宅してからは、すぐにシャワーを浴びた。自分がウィルスを家に持ち帰っていることは確実だと思われた。 ──2020年5月某日 緊急事態宣言が発令されてからしばらくした後、急に病棟が忙しくなった。集中治療病棟がCOVID-19重症患者の専用病棟にされたのだ。そのため、通常は一般病棟にいない重症患者を一般病棟で管理することになったのだ。日勤はスタッフの数が充実しているためよいものの、問題は患者十数人を看護師1人で担当している夜勤であった。 担当患者のうち1〜2人が重症患者だというだけで、精神が張り詰める。それが夜勤の16時間続くのだ。今までにないくらいのストレスを感じた。その後、救急領域以外の病棟でもコロナ患者を一定数受け入れることになったが、その分他病棟が緊急入院の患者を受け入れることになり、忙しさは信じられないくらい増した。病棟看護師の残業は増え、病院の方針に恨みが募るくらい皆疲弊していた。「自分は所詮使い捨ての看護師なのだ……」と何度も思った。 ──2020年5月某日 連日報道される医療従事者の姿は、救急外来やICUなどで働く医師や看護師の姿だ。もちろん、かれらが感染のリスクも高く普段よりも忙しい中働いているのは事実だが、それは他部署で働くスタッフも同じなのだ。医師や看護師だけではない、病院では挙げたらきりがないくらい、病院では数多くの職種が働いている。しかし世間で賞賛される「医療従事者」とは、いわゆる最前線で働くあのスタッフ達なのである。そんな報道の仕方にも辟易した。 ある日の仕事を終え帰途につく途中、居酒屋で楽しそうに大きな声で会話しているサラリーマン達の姿が見えた。「なんで自分達は私生活まで制限されているのに、あの人達は感染のリスクも顧みずに笑っていられるのだろう……」と悲しくなった。自分で選んだ仕事だけど納得がいかなかった。 皆わかっていないのだ。自身がCOVID-19に罹患するかしないかの問題ではない。もしCOVID-19以外の病気になって医療機関を受診すれば、私達のように疲弊した医療従事者があなたを診察し、治療に当たるのだということを。スタッフはあなたの訴えに耳を傾けることもできず、あなたの苦しみを取り除くことができないかもしれない。実際、COVID-19患者の対応に追われ、胸痛を訴えている患者のレントゲンを撮るのに2時間もかかったことがあった。そんな張り詰めた病棟にあなたは入院して治療をするのだ。このことを先ほどのサラリーマン達が、心のどこかに留めてくれれば……と思った帰り道であった。
 「電話相談は古くから看護職が大事にしてきたケアのひとつ、 のはずなのに……。」──“コロナ日記”より 匿名(看護教員 都内大学勤務) 2020年のゴールデンウィーク、私は新型コロナウイルスの受診相談窓口の日勤業務を終えビルを出た。最寄り駅までの真っ直ぐ一本の道のりが、とてもとても遠く感じたことを覚えている。歩く気力を完全に失っていた。言葉にしづらい複雑な負の感情が、身体に充満していた。一刻も早く自宅に帰りたかったが、この気持ちを連れ帰りたくなかった。駅で甘味を食べ一息ついてから電車に乗ったが、罵倒されたり脅されたりしたことばかりが思い出され、澱のように心の中に溜まっていった。 当時の社会状況は非常に混沌としていた。2020年2月、武漢から日本人を乗せたチャーター便が到着した頃は、私も、そして社会も新型コロナウイルス感染症を季節性のインフルエンザのようなものだと楽観視していた。ところが、3月に入り高齢者に感染が広がり始めると、治療の甲斐無く亡くなっていく人々が増えてきた。そして、3月末の芸能人の死が社会に大きなインパクトを与え、不安は一気に高まっていった。4月に緊急事態宣言が出されると、感染を恐れた人々が受診を控えたため街のクリニックが閑散とする一方で、発熱患者は救急搬送先も見つからない状況になり、医療を取り巻く環境がかつてない状況になっていった。そして、厚生労働大臣からは(後に国民の誤解だという弁明があったが)「受診の目安は、37.5度以上の発熱が4日間続いている人」という説明がなされ、体調に異変を感じても容易に受診ができない状態が4月・5月にかけて続いていた。医療機関で働く仲間からは、「“コロナ病棟”に配属にされたので遺書をしたためて勤務についた」という話や、「車中泊や病院泊まりが続いて疲れている」という声が聞こえるようになった。感染者が倍々に増えてきた頃には、「疲れ果ててしまったので仕事を辞めたい」という声が聞こえてきた。教員である私も通常どおりの授業ができず、さまざまな組み替えや作り直しがあり多忙ではあったが、看護職でありながら戦力になれない悔しさ、申し訳なさを感じるようになっていた。 そのような時に、電話相談窓口要員を募集するという話があった。医療現場の最前線に立つことはできなくても、間接的で微力ながら医療や社会に貢献できる機会だと思い、すぐに手を挙げた。電話相談は古くから看護職が大事にしてきたケアのひとつであり、病院にアクセスできない人に対する重要なアウトリーチでもある。また、話を聞くというのは看護の基本であり、ウェルネスセンターで働いた経験なども活かせるのではないかと考えた。配属が決まってからは、新型コロナウイルス感染症についての情報収集をし、どのような相談にも対応できるように準備をしていた。 私が受診相談窓口の電話業務を担当したのはゴールデン・ウィークの真っ只中だった。窓口業務の事務所に到着すると、夜勤担当者がげっそりした顔で受話器を握り説明や説得をしている様子が目に入り、大変な現場であることが一瞬にして伝わってきた。その傍らで、応対マニュアルが渡され業務について説明が行われた。基本的にはマニュアルに従った対応をすることが課せられた。相談員の業務は大きく2つに分けられる。一つは、相談者が濃厚接触者、もしくは重い基礎疾患のあるハイリスク群であるか否かを見極め、該当者がいた場合は居住地域の保健所に連絡し、PCR検査を受けられるように手配すること。もう一つは、体調不良の訴えに対して受診が必要な状態かどうか判断することであった。前者は非常にクリアな業務であるが、全相談件数の1%にも満たない程度だった。残りの99%が体調に不安を抱える本人、もしくは家族からの電話で、その多くが熱は37度前後でなんとなく体調が悪いというものであった。この場合は、急いで受診し感染する機会を増やすよりも、栄養と水分補給をしながら自宅養生することを勧める。発熱が続いており、強く受診を希望する相談内容であっても、窓口に病院を手配する権限はなく、休日や夜間でも診察可能な病院を紹介するサイトや電話番号を案内するだけだった。 後者の相談を受け続けていると、何度も何度も前述の説明を繰り返すことになる。「わかりました」と、すっきりした声で電話を切られる方は3割ほどで、多くは納得しないながらも受話器を置いている様子が伝わってきた。相談者はPCR検査を受け、自分が陰性か陽性かをはっきりさせたいという思いで電話をかけてきていた。だが、こちらが担っていたのは受診が必要な状態か否かを判断し伝えることであり、互いの間にはニーズのずれが生じていた。私は、電話相談がケアとして成立していないことを感じ、次第に歯がゆさを覚えるようになった。それに加えて、怒りをストレートにぶつけてくる相談者もいた。多くが本人ではなく代理の家族であり、その場合は非常に難しい応対を強いられた。まず、本人ではないため症状や事前の行動などの詳細を聞き取ることが難しい。さらに、受診が不要と思われ自宅養生を勧めても、「何かあったら、あなたが責任を取ってくれるんですか!」と返され、納得してはもらえなかった。また、受診の判断となる目安を伝えても、移動手段や受診先について「~に断られたらどうするんですか!」など、起きるかもしれない事態についての問答となってしまい、終わりが見えなかった。中には1時間近くこのようなやりとりが続いたこともあった。 確かに、得体の知れない感染症にかかったかもしれない家族を傍で見ているのは不安である。そのうえ、相談者は電話がつながるまでに、何度も何度もかけ続けているのだ。私が出るなり「朝からずっとかけている!」と罵倒されることもあった。そして相談者にしてみれば、ようやく話せたと思ったら期待した対応は得られず、通り一遍の案内だけである。不安が一気に怒りに変わり、こちらに向かってきたとしても仕方がないだろう。頭ではそうだとわかっていても、罵倒され責め続けられると心が疲弊していった。 次第に私は、この業務が相談者の役に立っているのか疑問に感じるようになった。電話は途切れることなく鳴り続けていた。一つの相談が終わり受話器を置くと、息つく間もなく眼前の電話が鳴る。数をこなし、たらい回しを続けているだけの機械のように思えてくる。壁時計を見ては残り時間をカウントダウンし、ひたすら自分を励ましていた。 医療者はエッセンシャル・ワーカーだと言われるが、それは専門職として裁量が認められ、ケアを展開することができて初めて重要な仕事となる。当たり障りのないマニュアルに従い応対するのは、まるで手足を縛られ動きを制限されているような感覚だった。それは、専門職であって専門職ではない実践だったのだろう。ケアにならないことを繰り返していたむなしさが、あの日の疲弊の正体だったように思う。
原稿募集

編集部では、本書に掲載する原稿を募集中です。ご自身の体験や想いを綴りたい方、同じ体験をした多くの看護職と出来事を共有し記録として残したい方など、この機会にあなた自身のご経験を文章にしてみませんか?

 

募集期間:随時募集中(10月中旬頃までの予定)

原稿テーマ:上記構成内容の「Part 2 個人の生活への影響」「Part 3 ナースたちの〈コロナ日記〉」(他のパートでも応相談)

原稿の分量:「Part 2」=3200字前後、「Part 3」=1500字前後(分量は目安です)

謝礼:採用された方には掲載書籍を2部進呈いたしします。

投稿先/問い合わせ:corona-report@jnapc.co.jp(「コロナ・レポート」編集部宛)

注意事項(必ずお読みください

  • メールの本文にお名前・電話番号・メールアドレス・ご所属・職種(看護師、保健師、助産師、教員など)を記載してください。
  • 原稿はプレーンテキストファイルもしくはWordファイルをメールに添付してお送りください。
  • 他の書籍や雑誌、公的な文書、ウェブサイトなどに掲載済か、その予定がある文章は採用できません。
  • 匿名での掲載をご希望の方は原稿ファイル内にご明示ください。
  • 文体は「である」調でご執筆ください。
  • 他の著作物からの引用箇所がある場合はその範囲を明確にし、出典を明示してください。
  • 写真や図表は1点まで掲載可能です(なるべく転載利用は避け、オリジナルのものをご用意ください)。
  • 採用の可否は後日メールにてお知らせします。
情報募集

新型コロナウイルス感染症の現場で活躍されている看護職や、感染拡大をめぐるさまざまな動向・ご経験にまつわる国内外の情報を、以下までぜひお寄せください(情報が採用された方には粗品を進呈いたします)。

 

corona-report@jnapc.co.jp(「コロナ・レポート」編集部宛)

注意:ご自身(情報を提供してくださる方)のお名前とご連絡先を必ず明記してください。

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