注1:模倣不可能な思考

 

もし、唯一の真なる解答やオリジナルの思考というものがあると仮定するならば、模倣は可能であると言えるでしょう。しかし、以下で触れるメルロ=ポンティの創造的表現とは、「オリジナル/コピー」という二項対立を前提した上でのオリジナルの思考でも、またコピーの思考でもありません。仮に模倣のように見えたとしても、それは別の者によって思考されている以上、模倣ではなく、新たな創造的表現なのです。ニーチェに従うならば、「事実は存在しない。存在するのは解釈だけである」ということになるでしょう。