表1 ナイチンゲール病院の原理 |
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I 病院の環境条件に関する項目 |
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項 目 |
内 容 |
備 考 |
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空 気 |
新鮮空気の供給。ベッド当たりの気積。独立棟。 |
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光 |
日照。 |
ある種の眼疾患、その他の例外を除く。 |
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注)ナイチンゲールは、[1]新鮮な空気、[2]光線、[3]充分な空間、[4]患者の独立棟への収容
を挙げているが、これらは結局、感染を防止するための換気と療養環境の向上のための換気及び日照にまとめられると思われる。 |
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II 病院の全体計画に関する項目 |
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項 目 |
内 容 |
備 考 |
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敷 地 |
乾燥した土壌(自然排水)。空気の清浄さ。患者輸送の便。医師、訪問者の便。医学校からの便。 |
空気の清浄さは特に重要。 |
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全体構成 |
患者を健康的な独立した病棟に収容し、それらを、[1]新鮮空気の導入、[2]全壁面の日照、[3]動線の合理化が実現するよう配列。 |
院内感染の防止。各々の棟(Pavilion)はあたかもひとつひとつが独立した病院のようにする。 |
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全病床数 |
各病棟の病床数の和としていくらでも可能であるが、管理上からは1,000床まで。 |
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隣棟間隔 |
最下階の病棟床からの高さの2倍以上。 |
日照と有効な自然空気の確保。隣棟との感染防止。広い敷地と長い動線を要することとの調和を考慮。 |
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方 位 |
各棟を南北方向にあわせる。 |
各壁面に最大限の日照を得るため。 |
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階 数 |
平屋建が望ましいが、2階建てまでは良い。 |
平屋建は科学的技術や換気装置を必要とせずに換気、日照が得られる。2階建ての場合も床のすきまあるいは階段室を通って上階に空気が移動することを防止する必要がある。 |
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廊 下 |
日照、換気を阻害せずに全棟を結ぶように。 |
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所要部門 |
病棟。一般管理部門。 |
その他手術室、洗濯室を病棟から独立して設ける。厨房などは病棟の下部でも良いとしている。 |
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換 気 |
戸、窓、暖炉が主体。人工換気は高価で非能率的。 |
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給 水 |
軟水を大量に。傷口の手当てにはろ過した雨水を用いる。水は貯水タンクにためない。 |
硬水は傷口の手当てには不可。汚染されるため。 |
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排 水 |
排水管は建物の下を通さず直接外壁に露出させて設ける。臭気止めのU字管や臭気ぬきの換気口を設ける。 |
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III 病棟に関する項目 |
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項 目 |
内 容 |
備 考 |
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病床数 |
病棟当たり20〜32床 |
20床以下になると配置職員数で不経済。コーナーが増加し、換気に不利。32床以上であると高い天井高を要し、建設費の上からまた換気能率の上から不利。死者が発生した場合小病室では同室者への影響大。 |
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1層当たり病棟数 |
階段が端部の場合は1病棟。階段が中央にある場合は両側に各1、計2病棟。 |
但し階段室には広い面積を与え、両側及び上部に開口部を設ける。 |
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所要室 |
病室、師長室、配膳室、浴室、便所、洗面所。 |
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病室構成 |
個室と大病室。 |
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個室数 |
32床に対し2床。大病院では大部屋に附属させず一群にして別の看護単位とする。 |
重症患者、騒々しい患者、不快な排泄物などのある患者を収容。 |
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大病室の面積 |
ベッド当たり最小100平方フィート(9平米)。気積では1,500立方フィート(40.5立米) |
換気、管理、臨床指導のスペースをとるため。 |
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大病室の天井高 |
15フィート
(4.5m) |
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小病室の面積 |
ベッド当たり2,500立方フィート(67.5立米) |
患者の症状、換気上不利であるため。天井高を15フィートとすると床面積はベッド当たり166平方フィート(15平米)となる。 |
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ベッド配置 |
片側に半数づつ壁に対して直角に配置。 |
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ベッド間隔 |
窓と窓の間に2台のベッドを置く場合は最低3フィート(0.9m)は空ける。ベッド間に窓がくる場合には窓幅以上。 |
ベッド寸法と窓幅寸法から換算すると窓と窓の間に2台おく場合、芯芯で1.8m以上。ベッド間に窓がくる場合、芯芯で2.3m以上。 |
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ベッド足許間の距離 |
11〜12フィート(3.3m〜3.6m)。医学校付設病院では16フィート(4.8m) |
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20床病室の基本寸法 |
長さ80×幅25(26)×高さ16(15)フィート |
ベッド当たりに換算すると1,600(1,560)平方フィートとなる。 |
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窓の位置 |
少なくともベッド2つ毎に1個の窓を向い合わせの位置に設置。 |
窓の機能として[1]日照、[2]換気、[3](読書ができる)照度を得るためとしている。 |
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窓寸法 |
幅員4’8”(1.4m)、床から2〜3フィート(0.6〜0.9m)、そして天井から1フィート(0.3m)以下。 |
床からの寸法は病床から外がみえるため、天井からの寸法は換気を良くするため。 |
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窓の建具 |
板ガラスのものか2重窓。2重窓がよりよい。また患者の症状に応じ光が調整できるように。 |
2重窓の利点は、天候にかかわらず換気可能なことであるが、欠点は清掃が困難なこと。 |
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病室床スラブ |
スラブはコンクリート並びに鉄骨ジョイスト染による補強。耐火性能を有すること。 |
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床仕上 |
オーク材、パイン材、タイル又は非吸水性のセメント。 |
非吸水性材料であることを示す。腐敗の原因となるおがくずを床下に残さぬよう。タイルやセメント材は熱伝導性良好のため温暖な地方に適す。寒冷地では織物の耳でつくった靴を支給したり、ベッド脇に敷物が必要。 |
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壁、天井仕上 |
艶がある非吸水性材料。目下のところパリアンセメントが最良。 |
石けんと水で洗浄可能で、タオルで拭き取れるように。 |
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色 彩 |
陰うつで不潔にならない明るい色。 |
病室内の一部でも暗いところができないように。 |
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木部仕上 |
ペンキかニスによる艶出し仕上。オーク材横羽目板。 |
洗浄可能なように。 |
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ベッドカーテン(キュービクルカーテン) |
不要。区画が必要なときにはベッドに座った頭部の高さ程度の低目の可動スクリーンを用いる。 |
換気を阻害し、洗濯費がかさむ。 |
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家具の種類 |
軽量の椅子と小型のベッドテーブルを各ベッドに。ひじかけ椅子と背のあるベンチを暖炉脇に。床頭に棚。 |
病室内家具の数は少ないほどよい。材質はオーク材。 |
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ベッド |
ベッドフレームは鍛鉄製。明るい色のペンキ仕上。マットレスはわら製のものを避け毛布団にする。症状に応じて水布団、空気布団も必要。マットレス台はワイヤー製のものよりズック製がよい。 |
ベッド寸法は幅3'〜3’6”、長さ6’3”。壁からの逃げをみると7フィート。わら製はつめたく、毛は耐久性があり熱による消毒も可能。ワイヤーの交点にノミやダニがつく、また鉄のヘリはマットレスを傷める。 |
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食 器 |
ガラス器か陶器 |
清潔で、洗浄手間が少ない。 |
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師長室 |
病棟の片側に配置し、寝室並びに居間として充分な広さにする。 |
昼夜を問わず待機、指揮できるように。 |
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配膳室 |
各病棟の師長室と廊下を隔てて反対側に配置し、看護師が食事ができ、看護師や補助員が洗い物をしていても、師長が飲み物や罨法の用意ができる広さを与える。 |
Sculleryを訳したもので実際には清潔準備室と呼べる機能を併せもっている。 |
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配膳室の設備 |
洗浄装置と調理用具。すなわち、給水、給湯付の白陶器流し。 |
汚染された空気の室内への侵入を防ぐため排水管は下水管に直結しないようにする。 |
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浴 室 |
大浴室と小浴室を設ける。大浴室は病棟から遠くない位置に廊下から入れるように独立して設け、小浴室は病棟に付設する。 |
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大浴室 |
充分な換気と暖房。温浴、冷水浴槽を設け、硫黄水、熱空気、薬物蒸気、シャワー、注水器を設備する。床は木製にし、壁は白色タイルかセメント。 |
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小浴室 |
施釉されたテラコッタ製の浴槽。給水、給湯設備。 |
テラコッタ製のものは保湿性がよく、清潔維持が容易。 |
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携帯浴槽 |
各病棟に供給し、給水、給湯、排水設備を設ける。 |
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便 所 |
入口の反対側、病棟端部で外気に直接面する位置に配置する。職員用便所は患者用と別に設ける。 |
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便所の設備 |
円錐型でなく半球型の大量の水が流せるサイフォン便器。背が高く、大型で、深く、丸型の穴のついた陶製流しで、大きな排水穴の上に水柱のついた汚物流しを便所の脇に設置。 |
汚水、携帯便器の始末、痰つぼ処理のため。 |
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洗面室 |
陶器製の洗面器を充分な間隔をとって設置し、浴室と隣接して設ける。 |
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便所、洗面室の仕上げ |
白い磁器タイル、エナメル状スレート、セメント。 |
乾燥し、清潔な状態を保つように。 |
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階段と踊り場 |
床仕上げは石製。 |
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廊 下 |
床仕上げは菱形の敷石あるいはタイル。 |
耐久性のため。 |
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テラス |
床仕上げはアスファルトを施釉したタイル。 |
歩行可能あるいはベット毎出せるように。 |
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IV 病棟以外に関する項目 |
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項 目 |
内 容 |
備 考 |
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厨 房 |
病棟から離し、明るい色のセメント仕上げ。定食、軽食、治療食の調理ができる設備。 |
しっくいは蒸気や臭気で剥離する。 |
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洗濯室 |
病棟の風下に別棟として配置。汚れたリネンは大量に保管しないようにする。清潔リネンは修繕、分類、供給の機能をもたせる。 |
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リネンシュート |
直径15〜18インチ(0.38〜0.45m)の施釉された陶管を用い、投入口は病室から遠ざけ、階段か換気良好な廊下につける。管は建物屋上まで通し、内部が換気できるようにする。 |
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手術室 |
外科病棟と同じ階、また男女両病棟から同一距離になるように配置する。大きな天窓、北側の頂側光をとれるようにする。術後患者は一般に回復室を設けるよりは病室にもどす方がよい。 |
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注)この表の作成には”Note
on Hospitals"(文献1)と”病院覚え書”、ナイチンゲール著作集
第2巻(文献8)を参考にした。 |